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『無キ者(ノー・バリアント)』 ――五感を奪われた僕たちが、残酷な世界で『人間』になるまで。  作者: 黒崎 凱
第二章:外の世界

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第14話:哀しき同胞

『サヤ』を始めとする『共生者』たちの助けを得て、僕たちは

修復された飛行艇『渡鴉ワタリガラス』で再び空へと舞い上がった。


目指すは『ジン』の故郷……彼と同じ生存者たちの最大拠点『アジール』


……だが、その眼下に広がる荒野を見下ろしていた『リア』は

急に喉を抑え、震え出した。


「あ……う……っ!!……痛い。

誰かの、泣き声が……聞こえる……」


『聴覚』を『共鳴シンクロ』させたリアの感覚は

時に僕よりも鋭敏に他者の感情を拾い上げる。


そんな彼女の意識の先に向け

僕が『視覚』を『望遠モード』に切り替え

数キロ先の岩場を凝視した瞬間……僕の心臓は凍りついた。


そこにいたのは、『マザーの紋章』が刻まれた

黒い『強化スーツ』に身を包んだ、三人の少年少女たちだった。


「あ、あいつらは……『無キ者(ノー・バリアント)』か?」

「いや……『そう』であって『そう』じゃ無いみたいだ」


『カイン』が低く唸るように言った

確かに、彼らの瞳には僕たちのような『光』はない。

虚ろで、焦点の合わない彼らの瞳からは

『青白い発光回路』が、まるで涙のように頬を伝っている。


……彼らの背後には、巨大な『パラボラアンテナ』を背負った

『管制車両』が鎮座している。


【――ターゲット確認。


個体名:『1301』『1309』……および

離反した『1200番台:カイン』を検知――】


三人の『同胞』が、一斉にこちらを見上げた

その瞬間、僕の脳内に針で刺されたような激痛が疾走った――


「ぐ……ッ!?……こ、れは……『脳内ジャック』かッ!?

くそッ……『マザー』が、あいつらを『中継局』にして

僕たちの……意識……を……!」


「なんて酷え事をッ!! ……チッ! 伏せろ、1301!」

『ジン』の叫びと同時に放たれた


『衝撃波』――


ビビビビビッ!!


――僕を含め、第十三世代に獲得者の多い

超感覚ハイパー・センス』の逆用

彼らは、自らの感覚器官を『過負荷オーバーロード』させ

それを、指向性の『精神波型兵器』として放射しているのだ。

 

言うまでもなく『リア』の歌声とは全く違う最悪の手段だ。

だが……威力は桁外れに強い。


直後『渡鴉ワタリガラス』の機体は激しく揺れ

計器類が次々と火花を吹いた。


「やめて……! お願い、やめてよ!」

『リア』が窓に張り付いて叫ぶ……だが、地上の三人は止まらない。


彼らの鼻や目からは、負荷に耐えきれなくなり

大量の血液が流れ落ちて始めていた……だが、それでも。

『マザー』の命令に従い、自分たちの脳が焼き切れるまで

攻撃を続けているのだ――


(助けて……熱い……暗い……)


――まさに最悪の状況と言うべきこの瞬間

混濁した『意識の通信』が、僕の脳に流れ込んで来た。


(こ、これは……彼らは『助け』を求めている?

なのに、その身体は僕たちを殺そうと動いて……くッ。

『マザー』……やっぱり。


お前の『平和』は間違っている――)


「――『ジン』

あいつらの上空で『ホバリング』してくれ……僕が降りる」


「バカ言え! あの密度の『精神波』の中に飛び込んだら

お前の『脳』もタダじゃ済まねえぞ!?」


「分かってる……だけどあいつらは僕の『兄弟』だ。

『マザーの正解』に縛られたまま、死なせるわけにはいかない」


……直後、僕は『振動剣』の柄を握りしめ

開いたハッチから荒野へと飛び出した。

 

叩きつけられる絶望の奔流――


『憎しみ』『恐怖』『苦痛』


――眼前の同胞たちから溢れ出す『負の感情』が

僕の五感を内側から破壊しようとする。


「ぐぎッ……くッ……負け……ないッ!!! ――」


避ける余裕なんてない……僕は、彼らに向かい一直線に走り出した。

これは『戦闘』じゃない……彼らを

あの終わらない暗闇の悪夢から引きずり出すための


『対話』なんだ――

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