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『無キ者(ノー・バリアント)』 ――五感を奪われた僕たちが、残酷な世界で『人間』になるまで。  作者: 黒崎 凱
第二章:外の世界

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第12話:廃墟に咲く声

人間の男『ジン』の飛行艇へと飛び乗った僕たちは

その、野性的な飛空艇『渡鴉ワタリガラス』の

悲鳴のような駆動音に耳を抑えながら

真っ逆さまに廃墟の街へと突っ込んで行く事となった。


……背後から迫りくる『マザー』の放った『追跡ドローン』


執拗に撃ち込まれるレーザーに依って

翼の一部は燃え上がり……機体は

かつて『超高層ビル』と呼ばれていた『巨大建造物』

今や、巨大なシダ植物に覆われた

唯の『コンクリートの骸』の壁面を削りながら、地上へと不時着した――


「畜生がッ!!! ……全員無事かッ!?」


――煙の立ち込めるコックピットで『ジン』が叫ぶ。


僕は、派手に転んでいた『リア』を引っぱり起こし

歪んだハッチを蹴り開けた……その『衝撃』と『音』のお陰か

直後『カイン』も漸く目を覚まし、朦朧としながらも立ち上がった。


「こ……ここは、どこ?」


リアが窓の外を見て息を呑む……そこは、緑の『地獄』だった。

かつて数百万人が住んでいたであろう『大都市』は

巨大な蔦に飲み込まれ、ビルとビルの間には

虹色の胞子が霧のように漂っている。


【――警告

汚染濃度:極大。旧人類の生存可能時間を超過……】


ハッチの外から、僕たちを追ってきた『マザーのドローン』が

無機質な警告音を撒き散らしながら降下してくる。

そして、武器を持たない僕たちを冷たい銃口で狙いながら。

だが――


「そこまでよ『鉄クズ』共!」


――突如、頭上の巨木の枝から

鈴の音のような鋭い声が響いた。

 

シュパパパパンッ――!!

 

空気の裂ける音と共に、緑色の光を纏った数十の『矢』が飛来した。

それはドローンの装甲を容易く貫き、その衝撃では『無く』

内部回路を一瞬で『植物の根が侵食する』ようにして破壊した。


「な……何だ?」


訳も解らず周囲を見回した僕

『リア』も『カイン』も警戒心を強めたこの直後

現れたのは、肌に『淡い緑の紋様が浮き出た人々』だった。


彼らは『衣服』ではなく『編み込まれた葉』や『蔓』を纏い

背中には植物の繊維で作られた弓を背負っている。


「この人達は……『ジン』の知り合い?」

「いいや、こいつらは……『フォレスト・エコー』

旧人類の遺伝子を植物と掛け合わせ

この汚染された地上に適応した『連中』だよ……」


『ジン』の言葉通り、彼らの瞳には

僕たちとはまた違う、深く静かな『生命の輝き』が宿っていた。


……多数の群れの中から、一人の『少女』が一歩前に出る。

彼女の頭部には、小さな花のような触角が揺れていた。


「あなたたちの瞳、とても綺麗……でも、とても『悲しい音』がする」


『少女』はリアに近づき、その頬にそっと触れた。

彼女の指先が触れた瞬間、リアの表情からは恐怖が消え

柔らかな安らぎが広がっていく。

 

「そう……『無キ者(ノー・バリアント)

あなたたちは、まだ自分たちの“声”の使い方を知らないのね」


そう言うと『少女』は周囲のビルを指差した……見れば

ビル全体を覆う蔦が、彼女の言葉に呼応するように

微かに『発光』していた。

 

「この街は……『生きて』いる。

鉄とコンクリートの死骸を、私たちが歌で繋ぎ止めているの。


『マザー』はそれを『不具合バグ』と呼んで焼き払おうとするけれど。

ほら、あっち――」


その時、地響きと共に遠くのビルが崩れた。

嗚呼あぁ……これは、一体や二体の話ではない。


『マザー』は、この『緑の街』ごと僕たちを殲滅するため

大型の重機兵を差し向けて来たのだ。


「貴方達に『戦い方』を教えてあげる。


耳を澄ませて……『鉄の声』ではなく、この大地の『呼吸』に」


僕は、差し出されるがままに『少女』の手を握った。

直後、取り戻した『聴覚』は機械たちが発する『ノイズ』の奥にある

大地の奏でる壮大な『旋律』を捉え始めた――

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