表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/27

お茶会と王子と、私の優雅な交友計画

「ふふ……今日は完璧ですわ!」

鏡の前で優雅に微笑む私、リリサンドラ・ヴァレンティーナ。髪には薔薇の飾り、ドレスは爽やかな水色のシフォン。どこからどう見ても、社交界デビュー前の公爵令嬢らしい愛らしさと品を兼ね備えた一日限定“完璧仕様”である。

目的はひとつ。――お茶会。

まだ本格的な社交界には出ていないが、同年代の子女たちで小さな交流会が開かれるのだ。貴族の世界では、人脈は武器。今のうちから友人を作っておくに越したことはない。

「今日は皆様に、わたくしのお手製プリンをふるまって――その甘美なる味に共感し合い、未来の親交を育むのですわ!」

リリアナ嬢やカロリーヌ嬢、あの侯爵家の姉妹とも、きっと仲良くなれるはず。にこやかに微笑み合いながらティーカップを傾けて、お菓子を交換し合って、時には秘密のおしゃべりもして――そんな夢のようなひとときを、私は想像していた。

ええ、完璧な計画。

……だったのですけれど。

と、ところが。

お茶会が始まって、まもなく――事態は崩壊した。


「ア、アリステリオン殿下!? な、なぜこちらに……!」

「殿下が……このような幼きお集まりに……!」


会場がざわめき、貴族の子女たちが一斉に立ち上がる。

そう。突然、第一王子アリステリオン・グレイフォックス殿下が、大した護衛も連れずに、軽やかに庭園のお茶会に現れたのである。


「ごきげんよう、皆。今日は良い天気だと思っていたら、甘い香りに誘われてしまってね」


(甘い香り……それ、わたくしのプリンですわね!?)

その優雅な笑みに、女の子たちはぽぉっと頬を染めて見つめている。中には口を押さえて感激している子までいる。

が。

(……ちょっと、待ってくださいませ)

わたくしは今日、“プリン外交”をもって、友人をつくるつもりだったのですわ!

それがどうして、王子のサプライズ登場で全部吹き飛んでおりますの!?

しかも――


「リリサンドラ嬢、よければ隣に座っても?」


「えっ……は、はい。光栄ですわ……」


(内心まったく光栄ではありませんけれども!?)

そんな私の複雑な心境も知らず、アリステリオン殿下は優雅に微笑み、さらりと座る。そして、話しかけてくる相手は――


「このお菓子、君が作ったのかい?」


「ええ、わたくしのオリジナルですの。『ぷ・り・ん』と申しますわ」


「ふむ。名前までかわいらしい。味も……優しい甘さだ」


「……恐縮ですわ」


(それ、“おいしい”で済ませられませんこと?)

周囲の子女たちが固唾をのんでこちらを見つめている。嫉妬の視線? いや、それより“なんであのリリサンドラ嬢ばっかり話しかけられてるの!?”といった不満がヒシヒシと伝わってくる。

(ああ、わたくしの友達作戦が……ッ)

王子の存在感が強すぎて、周囲の空気は完全に“謁見の間”と化していた。誰も話しかけてこないし、プリンも無言で食べるばかり。これでは、社交どころか“独演会”ですわ。

だが、私は怒れない。なぜなら――

(第一王子に対して「ちょっと空気をお読みになって」と言えるわけがございません!)

笑顔のまま、内心ではぷりぷりと怒り狂っていた。

そして、とどめの一言。


「また君に、何か甘いものを作ってもらいたいな。次も楽しみにしているよ、リリサンドラ嬢」


(……いえ、わたくし、“お菓子係”ではありませんわよ!?)

王子はにこやかに席を立ち、まるで風のように去っていった。

後に残されたのは、うっとりと見送る子女たちと、放心状態の私。

こうして。

わたくしの“お友達を作るための完璧なるお茶会作戦”は、王子の登場により、華麗に――

粉砕されたのでしたわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ