30.
それにしてもヨルロク・レサードについての情報があまりなかったのはなんでだろう。
しかも設定では裏の人って感じだったから、こんな堂々と出くわすとは思ってなかった。
それにしてもイケメンな。
キャシー様と同じ黒髪、けれど瞳は赤。
うん、こっちの方が魔族って言われちゃう容姿じゃね?
私はどタイプだけど。
やっぱり、キャシー様の容姿に可愛いからひがんでたってだけみたい。
美しすぎるのも大変な、気持ちすごくわかるもん。
「初めて私リリアナ・クロノスでございます。どうぞリリアナとお呼びください。ヨルロク様とお呼びしてもよろしいかしら?」
「…あぁ、かまわない」
いやん、なにこの猫みたいな人。
その何者にも興味ない瞳とか、ぼーーっとしてる姿可愛すぎ。
もう黒猫って感じ、ずっと見てられるわぁ。
「…ねぇ、リリー。少し向こうで話さないか」
え、まだYESって言ってないのにエスコート始めるのやめてよ。
私に拒否権なしかよ。
まだほんの自己紹介しかヨルロク様と話してないの。
それなのに…はぁ。
王子様ってこれだから嫌なのよね。
世界の中心は自分だっていう考え方。
「…私まだヨルロク様とお話ししたいのですが」
「ヨルロクとは、いつでも話せるだろう。いいから、ほら。行こう」
痛い、痛いって。
腰に回した手と握ってる手に両方に力入れるのやめてくれるかな。
誰かー、ここに悪魔がいますー、キラキラスマイルの下で暴力振るう悪魔がぁ。
「っ。わかりました。皆様、少しはずさせていただきますわね」
今日私、誕生日なんだけど。
なんでこんなめでたい日に2人からも呼び出し食らわないといけないわけ。
意味わからない、まだケーキすら口にしてないのに。
あぁ、糖分を。
お願いだから、糖分を摂取させて。
じゃないとイライラでおかしくなる。
「おいっ」
ふーんだ。
なにがおいっよ。
「…」
「ヨルロクはお前なんか好きにならないからな」
「は?」
意味わからん。
確かに見た目すごく好みだけど、それはライクであってラブではない。
…っ!
あーーね、わかった。
たった1人の男友達が取られるとでも思ったわけね。
相変わらずガキね。
「安心してよ、王子のたった1人の友達を取るなんてことしませんから」
「そっ。そんなんじゃねぇよ!」
そんなんじゃない?
え。
…待ってそっち?
まじかぁ。
でも色々納得だわ。
それで婚約者を作らなかったわけね。
「…なるほど。わかったわ。なにも言わなくていいのよ。ただ、これだけは覚えといて。私は…理解がある方よっ」
私はグーサインをビシッと出して笑った。
「よ、よくわからんがまぁいい。とりあえず、ほれ。プレゼントだ」
照れなくてもいいのに。
私は前世の記憶もあるから、結構男同士でもあり。
むしろ、少し萌える。
いやぁ、王子とヨルロク様か。
いいね。
2人とも美男子だし目の保養だわ。
どっちが攻めなんだろ…くぅぅ、ヨルロク様かな。
「おいっ、聞いてるのかっ」
やばっ、妄想にふけてたわ。
ごめんって、まじでいつか詳しく教えて。
「あーはい、ありがとうございます。これなんですか?」
「後で1人になってから開けてくれ」
「はぁ、わかりました」
なんだろ、気持ち王子の耳が赤くなってるような?
…まぁいろいろばれて恥ずかしいのだろう。
その夜、部屋に父が訪ねてきた。
「リリー、改めておめでとう。これは私からだ」
「パパっ!ありがとう」
開けてみるとムチだった。
…パパ?
「…この先、女性は力ではどうしても男には勝てんことに悩む日も来るだろう。だが、ムチを操れるようになっていれば、戦闘でも有利に戦えるはずだ」
ごめん、父よ。
てっきり変な趣味を押し付けられたのかと思っちゃったよ。
「ありがとう!私はもっともっと強くなるから」
いやぁ、やっぱり私のことめちゃくちゃ考えてくれてるのが伝わってきてほんと嬉しい。
父が出て行った後、王子からのプレゼントを開けた。
中身は、金色の宝石が埋め込んであるイヤリングだった。
派手だなとだけ思い、押し入れにしまったリリアナ。
このイヤリングが王子の瞳と同じだという意味に少しも気づかないリリアナであった。




