29.
「あの…?」
長らくの沈黙の末、口を開いた。
あれから私たちは2人で、会場から少し離れたベンチに座っていた。
話があるって呼び出しといて何も言わないので、我慢ならずに私は口を開いたのだった。
だって私は1秒でも早くこの場から去りたいもの。
仲良くする気も、お喋りすらごめんだわ。
「あぁ、ごめんごめん。ま、簡単に言うとさ、聞きたいことがあったわけよ。」
うん、喋り方ね。
私公爵令嬢、あなた伯爵令嬢。
おわかり?
何タメ口聞いちゃってくれてんの。
普段なら気にしないけどあなたなら気にしちゃう。
「なにかしら?」
「あー、いいって。堅苦しいの嫌いなのよ」
「…」
だからそれ私のセリフだって。
とりあえず上から目線で喋るのやめて、ほんとイライラしてるからこっちは。
「あんた転生者だよね?」
ぎゃっふぅぅぅぅぅぅぅぅっ。
え、まじかよ。
なんだよ、警戒してた私馬鹿みたいじゃん。
もう、それならそうと早く言ってよ!
「ええ、そのとおり。まさかヒロインのルルビアも転生者だったとはねー。ま、これからよろしくぅ」
いやぁ、勝ち確だわ。
だって、私、リリアナがもうどうあっても不幸なることないっしょ。
もう笑顔とまんないってぇ、えへへっ。
「ちっ。やっぱそーよね。なんか思ったように話進んでなくて焦ってたのよね。とりあえず、さ?リリアナ、あんた私の邪魔だけはしないでよね。てかちゃんとストーリー盛り上げてよモブらしく。ほんとよろしくだわ」
…。
性格わっるっ。
舌打ちスタートもそうだし、リリアナの事モブとか言ってくるし。
てかストーリー盛り上げてよじゃねぇよ。
なにそれ、音楽隊にでも頼めよ。
なんで私が盛り上げなきゃなんないのよ。
手拍子でよかったらするよ?
でも遠回しに私は不幸になってもどうでもいいって言ってるよね。
そっちがその気なら…。
「いやいや、なんか勘違いしてない?その感じだと王子狙ってんのか知らないけど、婚約すらしてない私がどう盛り上げるっていうの?ばかなの?勝手に1人でやって。私そんな暇じゃないので」
「ふっ。学園ではどうせ私の引き立てやくになるじゃないモブ子」
誰がモブ子やねん。
調子に乗るなよ。
「いや、ならないから。話それだけだったら行くね。あと、もう私に話しかけないでね、迷惑だから。あと記憶力悪そうだからもう一度いうわね?私リリアナ・クロノス、モブ子という名ではないの」
私は言い捨ててその場を後にした。
なにあいつ。
何あいつ、何あいつ、何あいつぅぅぅ。
むかつくんですけど。
あんなのがヒロインでいいわけ?
性格終わってっけど。
少しぐらい協力してあげてもいいかなぐらいは思ってたけど、あれは無いわ。
もう勝手にやってって感じ。
とりあえず。
ニノラス、きみにはお仕置きが必要みたいね。
「ニノラス様、探しました」
「リリアナ嬢、もう話は済んだのか?なんだ。わざわざ礼を言いに来たのか?別に気にしないでいいのに」
「…。そんなことおっしゃらずにぜひとも今度また手合わせ致しましょう」
このバカにちゃんとわからせないとね。
あまり私の手を煩わせるなと。
あーーーー、楽しみ。
「リリー様っ、もうお話しよろしかったのですか?」
あぁ、天使だ。
天使が舞い降りたのかと思ったよ。
「キャシー様、お待たせしてしまいすみませんでした」
「いえっ、そんな。あ、あの兄が来たようなのでぜひリリー様に紹介したいのですが」
「まぁ!楽しみにしてたのです。ぜひお願いしても?」
「やぁ、リリー。誕生日おめでとう」
うん、今このタイミングで登場するのだけは間違ってる。
今みーーんなっ、キャシー様の兄を期待してたからね。
「王子、様。どうもありがとうございます」
「あっ!兄上!ちょうどいいタイミングです」
兄上?
え、どこ?
キャシー様が声をかけたのは王子の方向だった。
すると、王子の後ろから彼は現れた。
「どうも…ヨルロク・レサードです」
またまた重要人物きたぁぁぁ。
ヨルロクの家名ってレサードかよ。
あと、誰かの人影に隠れていきなり姿見せるの流行ってるの?
ヒロインといいさ。
ほんと心臓に悪いから。
お願いだから、普通に出てきて。




