25.勘違い
「リリー様さすがですわ、素晴らしいセンスです!では次は相手の後ろに気配を消しながら近づき、急所をつきます。そのためー」
「キャシー様っ!いったんお茶にしませんこと?」
うん、あのね。
さらっと気配消してとか言われたけど、9歳の子供が誰でもできることじゃないよ?
できないからね。
いくら私が剣術極めてて、その辺の子より強いとしてもだよ。
「それでその後はどうですか?周りの反応は」
「リリー様のいう通りでしたわっ!何を言われても笑顔で堂々としていれば、周りも何も言わなくなりました」
「そうですか、よかったです。これからも何かあれば言ってくださいね。私達…お、お友達ですし…」
「…」
え?
違ったの?
あっれぇぇぇ⁉︎
友達だと思ってたの私だけなの…しょぼん。
「ふふふっ」
突然キャシー様が笑い出した。
うん、やっぱり君はべっぴんさんだよ。
可愛いよ、うさ耳付けたいよ。
黒髪にうさ耳はもう誰にも負けないからね。
…じゃなくて。
「あの?」
「っ、すみません、つい。リリー様が想像していたよりもずっと可愛らしい方でして思わず…」
うん。
今頬を染めて恥ずかしがってるキャシー様の方が可愛いと思うんだけど。
「お、お待ち下さいっ」
ん?
何やら家の方が騒がしいわね。
メイドの声も騒がしい。
なになに、今やっと剣の時間が終わって優雅なティータイム楽しんでるのに。
バンッ。
勢いよくドアが開く。
「おいっ、リリー!おまっ…。」
「「…」」
「ごほんっ。やぁ、君は確かレサード侯爵家のキャシス嬢だったね」
白々しいわ。
うん、ごまかせてないと思うよ。
ほら、キャシー様ツッコミな、なんでやねんって大阪人みたいなツッコミでよろしく。
「これは王太子殿下、このような姿での挨拶となってしまい申し訳ございません。キャシス・レサードでございます。リリー様、私この辺で今日はおいとましますわ」
「っ!キャシー様、その必要はございませんのよ?王子とは何も約束などしていなかったのですから。帰るのは王子の方です」
なんだよ、なに一丁前に私のこと睨んでるのよ。
本当のこと言っただけじゃん。
ぜーんぜん、王子に睨まれたって怖くないんだから。
「ふふふっ、お2人はとても仲が良いのですね。リリー様のお言葉は嬉しいですが、やはり私はこの辺で失礼致します。次はぜひ我が家に来てくださいねリリー様」
そう言って王子に綺麗な一礼をして帰っていった。
えぇーーーー。
もっとお茶したかったのに。
色々話したかったのにぃ。
王子のせいで…。
しばらくした沈黙の後、いきなり王子が口を開く。
「おい…何か俺にいうことあるだろ」
ん?
…ごめん、本当にわかんないんだけど。
いきなり人の家押しかけて来て、そんなこと言われても。
ハッ…あれかな、なにか褒めて欲しい、とか⁉︎
女子がよく前髪切った次の日に、なかなか気付いてくれなくて怒ってる的なあれかっ。
よしよし、そうと分かれば。
「王子、大丈夫です。安心してください、ちゃんと似合ってますよ」
「は?」
「前髪、少し切ったんですよね。周りの人が誰も気づいてくれなくて少し寂しかったんですよね」
「ちっ、ちげぇぇぇぇよっ!」
ありゃ、ちがった。
だったら、本当になにしに来たんだろ。




