22.変化
「…好きな食べ物、ですか?」
「あぁ、是非知りたくてね」
「サンドイッチ。…ですかね」
はたして1番好きな食べ物かどうかは分からないが、1番最初に浮かんだものには違いない。
前世、剣道の大会の度に父親が作ってくれた。
普段は母親が料理をしていたが、大会の時だけは父親が作ると言って聞かなかったそうだ。
ふと、懐かしいと思い笑みがこぼれる。
「気にくわないね、今誰のこと考えてたの?」
「え、あの…」
いやいや、いったい何が気にくわないのよ。
会話の最中に少し考え事してたからってそこまだ言う?
「よし、私ともサンドイッチを食べよう」
「え?いや、殿下とはいつもお茶の時間でしかお会いしておりませんし、それにー」
「だったらお昼に来たらいいよ、一緒にランチにしたらいい」
ほんとそれ直したほうがいいからね。
人の話を遮るクセ。
前回のエリスさんの時といい…。
てかいやだよ。
王宮の、あの型苦しい空気の中でサンドイッチおいしぃとかならないだろうし回避せねば。
「…庭で食べませんか?その、せっかくこんな綺麗なところですし。外だと気持ちいいでしょうし」
「庭か。いいね、庭でランチなんて初めてで楽しみだよ」
「あの、サンドイッチは私の家で用意してもいいですか?」
「本当?では任せようかな」
めっちゃいい笑顔やん。
でもなんかまだ隠してそうなんだよね。
そしてピクニック当日がやってきた。
「いい天気だね。あそこの木の下でランチにしようか」
「そうでね、日陰になっていて気持ち良さそうです」
持ってきたランチボックスを広げる。
「では、いただきます」
パクッ。もぐもぐ、ごくん。
なんか緊張する。
早くなんとか言ってよ。
「ねぇ…。これひょっとしてトマト入ってる?」
「!!お気づきになりましたの!トマトをすりつぶしてバジルと混ぜた、自家製のトマトソースをパンにぬっていますのっ」
「…。初めて美味しいと思った」
「殿下。もしかして、トマト苦手でしたの?」
「え、いや。ちがっ」
ぷっ。
「あはははっ、嘘でしょ⁉︎いつも完璧なみんなの王子様がトマトが苦手って。ふふふふっ」
王子顔真っ赤じゃん。
もはやあなた自身がトマトじゃんっ。
しかもトマトが苦手って、全然普通の子供じゃん。
なんか王子って思ってた人と違ったけど、前ほど苦手意識は無くなった気がする。
ほんとごめん。
久々にツボったの…っくくく。
ごめんってトマト王子、なんちって。
「っ。笑過ぎだぞ。俺にだって苦手なものくらいあってもいいだろっ」
「俺?」
「…」
「殿下、今俺って…」
「あぁ!もうっ。台無しだよ。そーだよ、俺って言ったら悪いかよ」
普通に口わるいじゃん、さっきまでの丁寧で大人ぶった喋り方は意識してやってたのか。
でも…
「別にいいじゃん?嫌いなものがあっても、一人称俺でもさ。王子は王子だと思うけど。それに私誰にも言わないしさ、私といる時ぐらい、ただの王子でいいんじゃん?それにその喋り方、嫌いじゃないよ」
「そっちだって、さっきまでと喋り方違う」
「そりゃそーでしょ。ずっとあんな堅苦しい喋り方とか無理だから。私はお嬢様ってがらじゃないし。それに私は女騎士になる予定だからいーのっ」
「ユノ」
「?」
「ユノっ。俺のことユノと呼んでいいぞ」
「いえ、王子で」
「なっ⁉︎せっかくこの俺がいいと言ってやってるのに」
「うん、だから殿下じゃなくて王子ってさっきから呼ばせてもらってるし。それ許可したってことで」
ユノなんて呼べねぇ。
周りに勘違いされるわ。
でも何その納得いってないって顔は!
「はぁ。じゃあ私のことリリーって呼んでもいいですから今回はそれで手を打って下さい」
とちょっと上から目線で言ってみたり。
ちらっと王子の様子をみる。
「いいだろう。り、リリー。今回はこれで手を打ってやる」
…っ。
まじかよ、何その屈託のない笑顔。
歯を見せてニカッと笑うその姿はどこからどう見ても同じ年齢の男の子だ。
いいじゃん、その方がいいよ!
ずっとそのままでいればいいのに。
私はふとそんな事を思っていた。




