20.リリアナという女(王子視点)
待ちに待った日。
今日のことを料理人に伝えると彼らに、先日のパーティーで銀の妖精と噂になっていた方かと聞かれたので、多分そうだと答えておいた。
すると彼らは任せて下さいくださいと元気よく答えた。
理由を聞くと、リリアナ嬢は帰る前にわざわざ使用人に「本日のお菓子は今まで食べた中で1番美味しかったです」と伝えていたのを料理人が聞いたからだそうだ。
律儀だな。
そういえばクッキーとマドレーヌが特に気に入っていたなと思い出したので料理人に伝えておいた。
門まで迎えにいったリリアナ嬢はあいかわらず妖精だと思った。
ん?胸元に薔薇のブローチか。
薔薇が好きなのか?
だったら、お茶会の場所を変更しよう。
先日のパーティーを行った庭ではなくあの場所に入れてやろう。
案の定リリアナ嬢は、感激していた。
ふん、そうだろうそうだろう。
すかさず女性が好きな特別扱いをしてみせた。
決まったな。
今度こそ俺に落ちただろう。
そう思い彼女の顔を見てみると、表情が消えていた。
はっ?
まじかよ。
効かないのこれ。
俺はつい動揺しお菓子の話にすぐさま切り替えた。
…調子が狂う。
その後色々あり素を出してくれることになった。
遠慮のなくなったリリアナ嬢は、なんていうか、今まであったことがない女性すぎて面白い。
もっと一緒にいて彼女を知りたい。
それにまだ言いたいことがあるようなので聞いてみると、予想外な答えが返ってきた。
「っ!第一騎士団訓練場に行きたいっですっ」
「は?」
「え?」
第一騎士団訓練場行きたい…だと?
目の前に俺がいるのに?
俺はつい腑抜けた音を出してしまった。
しかもなんでお前まで、俺の反応が予想外みたいな顔してんだよっ。
考え出したらイライラしてきた。
1週間、俺は楽しみにしていたのに。
俺との時間なんかリリアナ嬢にとってはどうでもいいみたいだ。
なんせ家でも会える父親の所に、今案内してやってるんだから。
それを考えるとついムカついて、嫌みを言ってしまった。
だが、リリアナ嬢には伝わらずため息がもれる。
なんなのだこの女は。
その後も暴走する彼女を見て、いやドレスを見て全てが繋がった。
これ以上好きにさせてたまるかと思い、俺が直々に剣の相手をしてやった。
驚くことにリリアナ嬢は強いし、独特のステップで戦いにくかった。
試合が終わると彼女は近づいてきて、素直に感謝と感想を笑顔で述べた。
その時の笑顔はいつもの作り笑顔なんかではなく、お菓子を食べている時のような心からのものだった。
かわいい。
欲しい。
ドレスチェンジした時思ったかわいいとは違う。
心の底から彼女以外がもう女に見えないと、確信させられた笑顔だった。
そう思ったらやることがたくさんある。
もっとリリアナ嬢に俺を意識させなくては。
多分俺は今日やっと、お菓子と同じくらいには感心を持ってもらえたようだ。
彼女にがっかりされないように剣の腕ももっと上げよう。
そしてまた褒めてもらいたい、微笑んでもらいたい。




