18.
さっきから王子の様子がおかしい。
「あの…私何かしました?」
「別に?それより、こっちだよ。君のこの1週間、とーーっても楽しみにしてた場所はもうすぐだ。よかったねリリアナ嬢」
はいはい、また王子様用のキラキラスマイルかよ。
「え、ええ。ありがとうございます」
私の返事を聞いた後、瞳を見開いてため息ついたの見えてるよ。
本当、しっかりこの目でシャッターきったからね。
あ、剣の交える音が聞こえる。
あそこの角を曲がればっ!
つい胸が高鳴る。
うひゃぁぁぁぁぁ。
パパだ、当たり前だけどパパがいるよぉぉ。
かっけぇぇ。
ついパパって言っちゃったよ。
最近では心の中では父と呼んでいたのに、テンション上がってパパって連呼しちゃった。
「少しいいか」
「っ、殿下。…っ、リリー」
「ま、また会ったねパパ」
驚いた父に、えへっと誤魔化して笑っておいた。
今までだって、父の仕事場を見たいと何度も言ったが、「あんなところにリリーを連れて行くことはできん」の一点張りだった。
だからちょっと強硬手段取っちゃったけどさ、私見た瞬間に抱きかかえないでぇ。
ほんと恥ずかしいの。
第一騎士団の方々みんな口開けてるよ。
「パパ?」
「す、すまない。つい」
ついだって!
可愛くない?
うちの父が可愛すぎだよ、優勝だよ。
「…なるほどね」
え、なんで王子なるほどとか頷いてるの⁉︎
今なにも納得するところ無かったよね。
まぁ、何はともあれ舞台は整った。
正確には整えた、だけどね。…次は。
「パパっ!私も訓練混ざりたいわ!ちょっとだけ、一太刀だけでいいのっ。お願い!」
「お願い、されてもリリー。今お前はドレスだ。またの機会にしよう」
「…ふふふっ」
「リリー?」
待っていたわその言葉!
今こそ私の真の姿、もとい新型ドレスお披露目の時よ。
私は父の腕から飛び降り、腰元のボタンを外しスカートの部分だけをバッと投げ捨てた。
「っっっっ!!」
王子含め、その場にいる全員が声にもなら無い音を発し、顔を赤らめた。
けれど次の瞬間。
ただただリリアナを見つめ、ざわつき始める。
スカートの下に現れたのは、同じくセットアップの下のバイオレットカラーの短パン。
そしてスラッと伸びる陶器のような白い肌を隠す黒革のブーツ。
どう?
最高に可愛いでしょ?
別にロングパンツでも良かったんだけど、最初はインパクトが大事なの、そしてかわいさね。
「…かわいい」
え?
王子なんか言った?
何かボソッと聞こえたので、振り返る。
「なんだ?」
いやこっちがなんだだよ。
「リリー、マカダミア侯爵婦人と何かやっていることは知っていたが。こういうことだったんだね」
「えへへっ。ねぇ、ほんとに一太刀だけでいいの…だめ?」
「っく。…わかった。一太刀だけ、だ」
よっしゃぁぁぁぁあ。
がらにもぶりっ子して良かったよ、作戦がちよ。
いや、フィナーレを飾るのは私の実力披露よ。
誰でもかかってこいやぁっ!
「ふふっ、リリーちゃんは相変わらずですね。団長、もし良ければー」
「私が相手をしよう」
おいぃぃぃ。
王子?
今エリスさん喋ってたの。
なに邪魔して割り込んでんのよ。
それに王子とやっても意味ないし。
私は強い人とやーりーたーいーのー。
「面白いですね」
「うむ。よかろう。では殿下にお願いしよう」
うっそ。
エリスさんも父もなに言ってんの?
本気?
「あのっー」
「リリアナ嬢は私では不満か?」
「い、いえ」
もぉぉ。
台無しよ。
試合前にエリスさんに最初から全力でと言われた。
当たり前ですよ。
相手が例え素人でも手を抜くなと前世の父親に口うるさくいわれてた私は、誰が相手でもいつでも全力を持って叩き潰すつもり。
王子との試合早く終わらせて今度こそ第一騎士団の人とやらせてもらおう。
試合前の握手。
「よろしく」
「よろしく、お願いします」
「ん?リリアナ嬢、肩に何かついてるみたいだ」
「え?」
「〜」
「っな」
王子は顔を近づけて黒い笑みを浮かべ、私にだけ聞こえるよう言った。
こいつ、ただのチャランポランのナルシスト王子じゃなさそうだわ。
俄然やる気出てきた。
ーリリアナ嬢、これ以上君の好きにはさせないよー




