17.王宮
ついにこの日がやってきた。
新型ドレスも何とか間に合った。
5着頂いた。
多いよ⁉︎
婦人曰く、作り出したら止まらなくなり、作り過ぎてしまったと。
だからだよね。
婦人の目の下にもの凄い濃いクマ、お化粧で隠せないほどのやつ。わかってる?
ミス・グレーもある意味バカだよね。
自分の仕事に誇りを持ってやっているのが伝わってくるから好きなんだけどね。
5着の中から今日という日にふさわしいものを選んだ。
私の瞳と同じ紫、というよりもう少し深みのあるバイオレットの新型ドレスにした。
胸元にある薔薇のブローチでシックな印象だ。
足元もヒールではなく、太ももまで伸びている黒革のロングブーツであり、とても動きやすい、
私は鏡に映る自分に手を添えて小さく笑った。
「ふっ。幸せ者ね私。…勝負はこっからよ」
今日は父と共に王宮に来た。
仕事に行くついでだと、門まで手を繋いでエスコートしてくれた。
馬車の間も「綺麗だね」とか、「私もリリーとお茶や剣をやる時間作れるように調整してみる」、「殿下に何かされたり、酷いこと言われたらすぐ言いなさい。私が斬る」…。
いやいやいやいやっ!?
最後さらっと怖すぎたよ。
娘のため、国に剣向けようとしてるからね。
うちのパパ最強でしょ?
「やぁ、よく来たね」
「…?」
「リリアナ嬢?ふっ。どうしたの?」
「いえっ⁉︎」
しまったつい声が裏返ってしまった。
そうでした、私王子とお茶しに来たんだっけ。
「この日が来るのが待ち遠しかったよ」
「私もですわ、いろいろ準備が大変でしたわ」
「準備?」
「ま、マナーのレッスンのことですわっ」
「あぁ、心配しなくても君はよくできてるよ?」
「ありがたきお言葉ですわ」
あっぶねぇ。
さらっと新型ドレスと剣の練習のこと言いそうになったぜ。
気が抜けない。
「きれい」
通された庭は先日パーティーが行われたところではなく、王宮の奥にあるバラが咲き乱れたところ。
つい心の声が漏れてしまうほど綺麗だ。
「気に入ってもらえてよかったよ。ここは限られた者しか入れないところなんだ」
げぇ。迷惑ぅ。
そーゆー、君は特別だよとかいらないから。
求めてないから。
「ねぇ、リリアナ嬢。お菓子、いっぱい用意したんだ。食べて感想聞かせて?」
「…ありがとうございます」
私は乾いた笑顔しかできなかった。
むしろ笑顔意識したのだけでも褒めて欲しい。
もぐもぐ、ごくん。ぱくっ、もぐもぐ。
「…あの」
「何かな?」
「殿下は食べないのですか?私が食べているところ見ていても、何も面白いとは思えませんが」
「そんな事ないよ。リリアナ嬢の美味しく食べている姿を見てるだけで幸せでお腹いっぱいになる」
「意味わからんわ」
「…」
あれ?私今なんて言った?
…。
のぉぉぉぉ。
ここまでの苦労が水の泡だっ、誤魔化さなきゃ。
「あの、その意味が分からないくらい美味しいっていうかー、その」
「くっ。くくっ」
わらっ、てる?
ドMだったのかな王子。
「やっと本当のリリアナ嬢と会えた気がするよ。あぁ、不敬とか気にしなくていいよ?そういうの気にしないし」
「…その言葉、本当ですか?」
「あぁ、王子のである私の言葉に二言はない」
これって信じていいやつ?
でも、もうバレてるのに猫かぶるのめんどくさい。
いっか。
「では、お言葉に甘え…ます」
「どうぞ」
ぶちっ。
何ヘラヘラしてんの?
ムカつく。
「殿下、私は殿下のその全てを見透かしたような笑顔が嫌いです。見ていてイライラします。それに今日だって本当は来たくありませんでした」
「へぇ。」
なになに。
その黒い笑顔。
いいって言ったよね?
まさか今更嘘でしたとか言い出す気⁉︎
「な、何です」
「別に。ただ王子である私にそんな事言う人は初めてで新鮮だったからつい、ね。あぁ。別に怒ってないよ?」
「はぁ」
「他には?」
「え?」
「言いたいことあるんでしょ?ここに来た時からそわそわしてるみたいだし」
「っ!第一騎士団訓練場に行きたいっですっ」
「は?」
「え?」




