13.
どうしてこうなった。
私の目の前には王子がいる。
お兄様、私を置いてどこに行ってしまったの。
あ、置いてきたのは私の方か。
「ねぇ、知ってる?このパーティーでは僕の婚約者を見定めるものでもあるんだって。」
「…まぁ、そうですの?良い方が見つかるといいですね」
あーそーですか。
なんでそれをわざわざ私に言ってくるの?
僕すごいでしょー的な?
興味ないわっ、と思いつつ紅茶に手を伸ばしたその時。
微かに笑い声が聞こえる。
「ふっ、ふふっ。やっぱり君は面白いね。まるで僕の婚約者なんて興味がないようだ」
そう言って楽しそうに笑っている。
なんかむかつくな。
だって私あんたのせいで全然楽しくないだもん。
でもここは笑顔よリリー。
そう、にーっこり営業スマイルで話題チェンジ。
「王子様、本日出ているお菓子どれもとても美味しくてついつい食べすぎてしまいますわ」
「だったらまた来ればいい」
「…」
「リリアナ嬢みたいに美味しそうに食べてくれるなら、宮殿の者たちも喜ぶ」
「まぁ、そんな」
いやいや、お菓子食べるためだけに王宮って来てもいいもの?
ここはカフェか何かでしたっけ。
色々考えながら大好きなマドレーヌを口に入れる。
美味しい。
残りも口に入れようとした時、声をかけられる。
「リリーはマドレーヌ大好きだね」
「お兄様!お兄様も是非食べてみてください、本当に美味しいんだから」
「じゃあいただこうかな」
突然のお兄様の登場で満面の笑みが漏れる。
私がニタニタしているさなか、お兄様は私が手に持っている食べかけのマドレーヌをパクリ。
「っ!」
「うん、確かに美味しいね」
「もうっ、お兄様ったら」
きゃーきゃーっ。
お兄様にあーんしちゃった。
「ごほんっ。そんなに気に入ってもらえて僕も嬉しいよ」
あら、まだいたの。
失礼、まぁいるわな。
でも今この場での優先順位はお兄様→マドレーヌ→王子の順番だからね。
「…。リリー、そろそろ帰ろうか」
「はい!お兄様」
「えっ」
「では殿下、我々はこの辺りで下がらせていだきます」
「この後、ダンスの場も設けてあるのだから、もう少しいてはどうだ?私も是非リリアナ嬢と踊りたくてね。リリアナ嬢どうかな?」
「まぁ、そうだったのですね。お誘い頂きありがとうございます。ですが私足を痛めていますの。またの機会にお願いしますわ。今日はとても楽しかったですわ」
「そ、そうか。ではまた誘うとするよ。今日は来てくれてありがとう」
あっぶねぇ。
ダンスがあるなんて知らなかったし、王子と踊るなんて無理。
またの機会なんて絶対ないから。
その時もきっと足痛めてるからっ。
「いつの間に足痛めてたの?」
笑いを堪えながら聞くのやめてよねお兄様。
「お兄様も早く帰りたそうにしてたではありませんかっ」
「当たり前だよ。あと、帰ったら少しお話ししようね、リリー」
「お話し、ですか?」
「僕を置き去りにした理由を、分かりやすく…ね」
ばれてたーーーー。
「まぁ、なんのことかしら?ふふっ」
「…」
「…ごめんなさい」
やっぱりお兄様には全てお見通しみたいだわ。
さ、いっぱいお菓子頂いてしまったし、家に帰ったら素振りでもして体動かそうかな。
竹刀と剣ではやはりいろいろ勝手が違うので、剣を習い始めた私は未だ、いろいろ模索中なんだよね。
あと真剣って、それだけで握った時の責任感?みたいなのがあって攻撃にまだ躊躇してしまう。
そういうのも含めて、今の課題は距離感ね。
うし、やるぞぉっ。




