【外伝】宇宙艦隊オッパリオン「母乳機関始動、搾乳を体験する」
【外伝〇〇二 母乳機関始動、搾乳を体験する】
母乳要員の仕事場となる母乳機関直結搾乳室はその名の通り、艦に搭載された母乳機関が納められる機関室のすぐとなりにある。
エイテルに連れられ、シルキーはそこに向かっていた。
「驚きました、エイテルさんは母乳要員主任だったんですね」
「艦上勤務の経験が評価されたみたいね」
「ベテランなんですね。尊敬します!」
「ふふふ、なにか困ったことがあったら遠慮なく言ってね。艦上生活のことも、搾乳のことも」
「はいっ!」
ふたりが搾乳室の前につくと、部屋の前には白衣を着た女性が立っていた。その女性はオッパリオン人ではなかった。シルキーは思わずハッとする。その女性はマーラ人だったからだ。
そのマーラ人女性はエイテルを見ると片手を肩まであげて挨拶する。
「やぁエイテル。待っていたよ。そちらが新人の?」
「そうです。シルキー、こちらはオッパリオン最高技術顧問のミィアルーン博士よ」
名前を聞いてシルキーはさらに驚いた。
「ミ、ミィアルーン博士!?」
アーリア提督に並ぶ、オッパリオンの有名人だ。
ミィアルーン博士は十数年前にマーラ帝国からオッパリオン星へと亡命してきた科学技術者であり、オッパリオン星に母乳機関と人型機動兵器の開発技術をもたらした天才博士として有名だった。
「そんなに驚くようなことはないだろう。今日はよろしく頼むよ、シルキー」
ミィアルーンは気さくにそう挨拶した。
「は、はいっ。ご期待に応えられるようがんばります!」
「心強いね。――まぁ、そうは言っても艦載母乳機関の試運転なんだ。この新型母乳機関は出力こそ高いものの、安定が悪くてね。すぐに機嫌を損ねるんだ」
「それなら、わたしたちのおっぱいをあげてあやしましょう」
エイテルがそう冗談を言うと、ミィアルーンは軽く笑う。
「頼むよ。さっそく入ってくれ」
「はい。シルキー、いきましょう」
「はい。では博士、失礼します」
「うん。――あぁ、スタティアの機関搾乳はふたり一組で行うようになってる。だからふたり一組で三交代だ」
「そこは前にいた艦と同じなんですね」
エイテルの経験と合致するようだった。シルキーにははじめてのことだ。
「主任と一緒で心強いです」
「長時間搾乳の経験はあるかしら?」
「あ、ありません……」
「最初は結構な疲労感があるかもしれないけど、すぐに慣れるわ。たくさん母乳を出すのが仕事だから、食事はしっかりね。あと、暇な時は胸をマッサージしておくといいわ」
「わ、わかりました」
母乳要員の心得を聞きながら、シルキーとエイテルは座席に据わる。搾乳室は狭く、ふたりは横並びで座る。すると座席の前のパネル下からアームが伸び、ふたりの胸に被さる。胸に吸い付くようについたアームはシルキーの乳首を覆うニップルアーマーを取り外し、乳首を吸うようにぴったりと密着した。
これは日頃行う搾乳に使う搾乳機と同じような感覚で、シルキーも違和感はなかった。
パネルには接続完了の文字が流れる。
――いよいよ母乳要員としての第一歩がはじまる。そう思うと緊張感がこみ上げてくる。
「大丈夫、落ち着いて」
「は、はい……」
すると、室内に音声が流れる。
『機関室のミィアルーンより艦橋ミストレア艦長。こちらの準備は整った。いつでもいいぞ』
『艦長のミストレアです。では、これより母乳機関試運転を開始します』
機関室と艦橋とのやり取りが聞こえることにシルキーは驚く。思わずとなりのエイテルを見ると、エイテルは頷いた。
「母乳要員は今艦がどのような状態にあるか、なにをするのかがわかるように艦内の通信が聞こえるようになっているの。でも、聞こえるだけでこちらからなにかを伝えることはできないわ。だからこの声も艦長たちには聞こえていないってわけ」
「なるほど……状況がわかるのはいいですね」
「母乳がどう使われているかわかるということよ。目の前のパネルではどのくらい母乳が必要とされているのか、自分たちはどのくらい母乳を提供しているのかがわかるようになっているからね」
母乳要員に与えられる情報は少ないのではと思っていたシルキーには意外な待遇だった。こちらから話を伝えることはできないようだけど、知りたい情報はほとんどが得られると思った。
ミストレア艦長の声がする。
『母乳機関始動。艦内システム戦闘状態へ意向。エネルギー伝達を確認』
『機関室了解。母乳機関始動』
目の前のパネルに搾乳モードと表示され、いくつかのゲージの表示に切り替わった。
「はじまるわ。力を抜いて」
「はい」
力んでいると母乳が出にくくなることは知っていた。緊張していたが、シルキーは力を抜く。すると、搾乳機が乳首周辺のマッサージを開始し、乳首を吸いはじめる。
果たして母乳は出てくれるか――シルキーは瞬間そう思ったが、それは杞憂だった。シルキーの胸に装着された搾乳機はシルキーも驚くくらいスムーズに母乳を搾りはじめた。
「くっ、あっ……」
乳首周辺がマッサージされる感覚、それと乳首を吸われる感覚に思わず声が出る。
オッパリオン人は普段から習慣の一部として搾乳をするが、それには大抵搾乳機を使う。シルキーもそうだった。しかしこの搾乳機はシルキーが使ってきた一般的なものとは違い、刺激が強いものだった。
「くぅっ……」
だが、これは悪い刺激ではない。そうなのだが、声を漏らしているシルキーをエイテルは気にかけた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です、ちょ、ちょっと刺激が……うくっ!」
マッサージの感覚と乳首への吸い付き、そして母乳が出る感覚はシルキーを小さく震えさせた。それは快楽、と言って差し支えのないものだった。搾乳そのものには慣れていたが、普段よりも強めの刺激と多めの母乳の分泌が、シルキーを高揚させる。
「はぁっ、あっ、こんな……!」
それを見たエイテルが微笑む。
「軍用搾乳機はこの感じよシルキー。最初は刺激が強いかもしれないけど、だんだん慣れていって……まぁ言っちゃうけど、気持ちよさみたいなのだけが残るわ」
「エ、エイテルさんも……き、気持ちいいんですか?」
「そ、そうね。任務でしているから言いづらいのだけど、気持ちよさはあるわね」
「よ、よかった、わたしだけだったらどうしようかって」
「安心して、あなたは正常よ」
「安心しましたけど……これ、本当にっ、うっ、ひあぁあっ!」
安心したせいもあってか、大きめの声が出てしまう。それを見たエイテルは苦笑いを浮かべている。
顔にほてりを感じながら母乳提供を示すゲージを見ると、ゲージは上昇し、要求量を上回っていく。
『機関室より艦橋。母乳機関安定稼働を確認』
『艦橋より機関室。これより主砲エネルギー回路への接続を開始する。主砲発射用意』
スタティアはまだドックに固定されている。主砲にエネルギーを回していいのかと、シルキーは不安に思った。ここで撃つ気なのだろうかと。
そう思った次の瞬間、室内の照明が赤い色に切り替わり、母乳の要求量を示すゲージが一気に減少する。
「あら?」
「え?」
エイテルは思わず天井を見上げていた。
「ど、どうしたんですか?」
「これは……なにかあったわね」
「え?」
すぐにミストレアの声がした。
『艦橋より各員。兵装エネルギー伝達路で異常を確認。作業員はすぐに特定に向かって。機関室は一度母乳機関停止』
『機関室了解。母乳機関停止。予備動力に切り替える』
そう言うと証明が元の色に戻った。
「異常って……」
「新造艦にはよくあることね」
エイテルは慣れた様子だった。搾乳機が自動でニップルアーマーを付け直すと、胸から離れてパネルの下に格納されていく。
なんだか拍子抜けしてしまった、シルキーがそう思っていると搾乳室の扉が開き、ミィアルーンが入ってきた。
「せっかく準備してもらったのにすまない」
「いえ。問題が見つかったのが実戦じゃなくてよかった」
「そうだな」
エイテルとミィアルーンはそう言って笑みを見せ合っていた。そのミィアルーンがシルキーを見る。
「順調な搾乳ができていたよ。いい母乳要員が見つかったようだ」
「そんな、ありがとうございます」
シルキーはミィアルーンの言葉に恐縮してしまった。少しの時間であったが、エイテルの言葉を借りるのならば実戦前に問題を発見するということには貢献できたようで、シルキーは少しの達成感があった。
「まぁ問題改善には少し時間がかかるだろうな。――ところでシルキー、母乳機関と母乳力についてはどのくらいの理解があるかな?」
「え、えっと……。母乳機関はわたしたちオッパリオン人の母乳を使って動くエンジン、くらいの知識です。母乳力についても、わたしたちの母乳にあるエネルギーという認識です」
「なるほど。それで間違いはないな。けど、せっかく母乳要員になったんだ、少し理解を深めておくかい?」
「え――」
シルキーは目をぱちぱちさせてしまった。なんと応えたらいいのだろうと思いエイテルを見る。するとエイテルは笑う。
「ミィアルーン博士自らの講義を受けられる機会なんてそうそうないわ。解説してもらっておくと、わたしたちの母乳がいかに大事かがよくわかるわよ」
「そ、そうですね。博士、お願いします。ぜひ聞かせてください」
「講義、なんてほどのものじゃないけどね。では要点をかいつまんで説明しよう。楽にしてくれていい」
エイテルと一緒に、シルキーは椅子に座り直した。それを見て、ミィアルーンが話をはじめる。
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「宇宙艦隊オッパリオン<本編>」
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