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プヲタJKとアラサー俺、プロレス部をつくる  作者: 遊星


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21/31

21話 メインイベント、女は常に正しい

いよいよ第2試合、メインイベントが始まる。


ステージ裏で美依希と小鞠に声をかける。

空手の型で身体を温めている美依希は、目を合わせずにひと言


「大丈夫です」


少し離れたところでジャンピングジャックをしている小鞠は、息を弾ませながら


「よろしくお願いしまーす!」


と握手を求めてきた。


2人とも集中している、大丈夫そうだ。



リングに上がりニュートラルコーナーで入場を待つ。


Sakuya2に乗って優雅に魅依綺が入場。白の打ち掛けを羽織って髪を束ね、扇子で顔を隠し気味にしている。


ステージ上で後ろを向いたまま打ち掛けをはらりと脱ぎ、髪をほどいて頭を一振りすると、豊かな黒髪が背中を伝う。


銃声を挟み、音楽がメガデスの『99 ways to die』に替わる。

魅依綺がカカト落としの要領で振り向き足を力強く踏みしめ、会場を一睨みする。


光沢のあるブラックで、ぴったり身体に沿ったジャンプスーツ調のコスチューム。右腕と左脚は袖が切り取られ、長い手足が伸びている。


美依希ファンクラブの連中が歓声をあげるが、見向きもせずに高慢にリングに歩を進める。


『深窓のカラテスナイパー 魅依綺ー!』


コールを受け、ただ髪をかき上げるだけ。それだけで観客の視線を引きつけてしまった。

圧巻の入場だ。




WEST.の『証拠』が流れ、会場の空気が一気に明るくなる。

曲をかき消すほどの雄叫びをあげて、小鞠の登場だ。


深紅で統一した、ホルターネックのトップスにショートタイツ。

誰よりも基礎トレーニングを積んできた小鞠の肉体に映えるコスチュームだ。


満面の笑顔で客席に飛び込んでいき、ハイタッチを交わす。テーマ曲を口ずさみながら、ひとりひとりと。


最初は戸惑っていた観客も、次第に小鞠と同じ笑顔になってくる。

曲が終わりかける頃にようやくリングイン。


『ボンバーガール! こま〜り〜!』


シンプルに右腕を突き上げ、絶叫。

巻き込んだ観客から大きな歓声が起きる。




ボディチェックをしゴング。

ファーストタッチで魅依綺がハイキックを狙う。小鞠がすんでのところで躱し、会場が大きくどよめく。


その後はロックアップからベーシックなレスリングを見せていく。小鞠のリストロックを、魅依綺が顔面へのパンチで返す。


「おい、反則だぞ!」注意する俺に唾を吐いてみせ、客のヒートを煽る。


魅依綺が鋭いミドルキックを連発し追い詰め、ロープに振る。リバースした小鞠がジャンピングニーで反撃、

「おー!」の掛け声。


優勢の小鞠、重いフォーアームスマッシュで攻めたてるが、魅依綺は髪をかき上げて余裕の表情。対して小鞠は、困惑と恐怖の表情。


手刀で小鞠を怯ませ、走り込んで前蹴りを狙う魅依綺。小鞠は躱してバックに回り、コブラツイスト。


「コブラー!」


小鞠が叫ぶ。技をかけて名前を叫ぶなんてバカみたいだが、このバカバカしさがプロレスなんだ。

観客も大喝采だ。


魅依綺が極められている右手で小鞠の髪を掴んで脱出。俺の反則カウントにあわせてぶん投げる。女子プロレスの定番、ヘアホイップだ。小鞠はコマのように回って吹っ飛んでいく。


立ち上がろうとしている小鞠の顔面を、魅依綺が足の甲で蹴り上げる。

『そこまでするか』と観客が息を飲む。


いいぞ。蹴られる直前に小鞠が掌を入れている。掌1枚でダメージは大きく軽減する。信頼関係が無いと出来ないムーブだ。


再度髪を掴んで、場外に放り出す。豪快にアウトサイドする小鞠。


しまった。


場外への落ち方を教えていなかった。

今の落ち方はマズいんじゃないか。

案の定、小鞠は左足を引きずりながら逃げている。


魅依綺が追いかけて場外乱闘。

「下がってくださーい!」

スタッフのソフトボール部たちが大声で叫ぶ。

客席に向かって小鞠をホイップ、イスをなぎ倒して5〜6列めくらいまで吹っ飛んでいく。


場外乱闘は、会場の熱を上げるのに効果的だ。立って逃げ惑い、さっきまで自分が座っていたイスがレスラーの身体でなぎ倒されていく。

目の前で、魅依綺がミドルキックをぶち込み、身体が鈍い音をたてる。



『目の前の臨場感が、観客を当事者にするんだ』

共商祭前の練習で、繰り返し伝えた。

『目の前でやるからこそ、絶対手を抜くな。キックもチョップもイスも、思い切りぶち込め』



小鞠をリングに戻し、魅依綺が客を煽りながら悠然と戻ってくる。素早く小鞠に顔を寄せ確認する。


『足か?』


『足首』


『立てるか?』


『立てるけど走るのは微妙』


『OK』



魅依綺を制止するふりをしながら伝える。


『足首痛めてる、膝を攻めろ』


『!でも……』


『足攻めしたほうが動かなくて済む、

ダメなら俺が止める、

やりきれ』


倒れている小鞠の左脚を持ち上げ、ローキックをいれる。


「アァァー!」


今までと違う悲壮な絶叫、客が眉をひそめる。ロープに縋り立ち上がる小鞠だが左足を残している。


『蹴ってくれ』だな


意図を汲んだ魅依綺がローを蹴ると、小鞠は半回転して倒れる。今度は左足がロープにかかっている。


『踏んでくれ』か


魅依綺が憎たらしく踏みつけ捻る。

ヤジを飛ばした客に「黙ってなさい!」と言い返している。


知らない人と話せなかった美依希が、魅依綺になって、今は客に怒鳴り返している。


魅依綺がさらに足を攻めようと足をとる。エルボーを落とす、1撃、2撃。

3発めを入れようとしたところを小鞠が跳び上がって延髄斬り。2人とも倒れる。


小鞠が天井を向いたまま

「くそ、走れない。

コーナーアタック無しでスラムに変更、ミーキに伝えて」


魅依綺がふらふら立ち上がる。渾身のボディスラムからトップロープに上がりミサイルキック。仕掛けた小鞠も膝をおさえて悶絶しながらもフォール。


小鞠、続けてジャーマンを狙う。魅依綺、前転し膝十字固めに切り返す。なんとかエスケープしてコーナーマットにもたれる小鞠の後頭部にトラースキック!


これはえげつない、小鞠の頭がバスケットボールのようにバウンドし倒れる。


魅依綺が唇に人差し指を当て『シ〜』のポーズ。頃合いを見計らって背中に強烈なサッカーボールキック。

静まった場内にボグォッと鈍い音が響く。すかさず魅依綺、走り込んで小鞠の胸板を蹴り飛ばす、PKだ。


『終わりだー!』

魅依綺が確信のフォール、カウント3ギリギリで返す。魅依綺は『ありえない』と憤怒の表情。


乱れた前髪の間から、爛々とギラついた目で魅依綺を見返しながら立ち上がる小鞠を、魅依綺が憎々しげに足蹴にする。


とどめと仕掛けたブレーンバスターを小鞠がぶっこ抜く。魅依綺もすぐ立ち上がりフォーアーム。


そこからはフォーアームの撃ち合い20往復だ。2人とも泡を吹き目が飛びながら撃ち合う。


しびれを切らした魅依綺が走り込んで前蹴り、かわした小鞠、そのまま痛めた足で走り抜けてスピアー、ジャックナイフ固め!


部活紹介で美依希から取ったコンビネーション、魅依綺は3ギリギリで返す。


立ち上がった魅依綺のバックに回りジャーマンスープレックス。いや、踏ん張りが効かない左足を上げて右脚一本のジャーマンスープレックス!


フラミンゴジャーマンだ!

3カウント!優羽とすみれもリングになだれ込んでくる。

両者とも突っ伏して、肩で息をしている。


美依希に駆け寄る。


「大丈夫か?」


「草野先生に受け身教わったんですよ、大丈夫に決まってます」


小鞠のほうに駆け寄ると


「くっそー!足痛くて動けなかった!」


「ナイスリカバリー、気にするな、よかったぞ」


2人の回復を待って、5人で手を上げてあいさつする。締めは部長の小鞠だ。


「皆さん!楽しんでいただけましたか!」


歓声があがる。


「私たちもです!

痛くてつらくて、でもその100倍楽しかったです!

また一緒に楽しみましょう!

今日はありがとうございました!」




……終わった!


ひとりずつに声をかけようと思った時、小鞠が背中にハンマーパンチを落としてくる。


すみれがロープに振ってドロップキック、倒れたところに優羽がセントーン、顔を上げたところに美依希がトラースキック。痛ってぇ、こいつらやりやがった。


引きずり起こされ、小鞠は一番最初に教えたヘッドロック。きっちり手首の骨で頬骨を絞めてくる。


「いてててて!」


たまらずタップする。


倒れた俺に4人が次々と覆い被さってきてフォール。自分たちで3カウントをいれて大笑いしている。


リング上で5人が折り重なって出来た山のなかは、会場の大歓声が遮られて不思議な静けさが流れている。


「センセ!惚れ直しましたか!?」


「うん、惚れ直した。お前たち最高だ」



どさくさに紛れて小鞠が俺の頬に唇を寄せてくる。おい、待て。4人乗ってて全く動けないんだ。


小鞠の唇が、試合後の上気した体温を感じられる距離まで近づいてくる。観念して目を閉じる。


「わーーっ!」


あと数センチというところで、美依希たちが小鞠の顔を引きはがす。


「小鞠さん、抜けがけにしては堂々としすぎですよ」


「クサリュウ、あんたも避けなかったでしょ、というか目閉じてなかった?」


「ありえねーな、エロ教師!」



再度、瀬尾さんの言葉が脳裏をよぎる。


『いいか草野。常に女が正しく、男は間違っている』







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