鬼退治③
彼の話は全て彼の知らないはずの真実。
木こりの一族と探検家の一族と洞窟の一族と道の一族。それらは全て神殺しの一族。神殺しをすれば神になる。
人が神とも呼ぶべき大いなる自然から絶滅を避ける術を繋いで来た一族たち。
彼等のトップが負ける度に人は絶滅の危機に陥った。
木霊は常に人を脅かす。
女神教が現れる以前の神は超常の力など持たなかった。持たないまま本来それが必要な相手と戦った。
洞窟の一族は人の住む場所を見つけ守った。
探検家の一族は新たな洞窟を見つけた。
道の一族はそれぞれの一族を連携させた。
木こりの一族は見えない敵の正体を見破ってきた。
私は鬼から生まれた鬼食い人。
力をつけるまで成長すれば鬼に対して有利に戦える。
けれど所詮私は鬼の子。
母を食い殺した事は未だに私を縛りつづける。
なぜなら私が鬼を食べられるままで成長出来たのは鬼である母が私を食い殺さなかったからに他ならないのだから。
彼は科学者として最近発見された情報あふれと呼ばれる現象から未来や遠くの場所の出来事を予測する。現在では最先端の研究をおこなっている。
そんな彼の書棚には似つかわしくない童話や絵本もおかれている。
桃太郎、一寸法師、酒呑童子…鬼退治の話ばかり。
彼と私は何度か喧嘩をした。2人とも温厚な性格のはずだった。学生の頃には2人は一度だって声を荒げた事なんてなかった。けれど私だって彼同様最先端の分野の科学者、意見が合わなくても引けないこともある。
そんな日には私はなぜか自分が人から鬼に変わっていく夢を見る。そうして妹や未来に生まれる妹の娘に私は食い殺される。
翌日仲直りするが彼は
「木こりの一族って、こうやって森の中で生きて来たんだ。魔除けのおまじないだね。魔術師でなくとも、精霊や鬼、魔物や獣、そういうものから人を守ってきた知恵だ。」
この悪夢を毎日見せられるなら私はこの地から離れるだろう。ただその方法は私にはわからない。
離れるだけなら簡単に思うかもしれないが私にはなぜか答えが見つけらない。
物理的な距離だけでは足りないのだろう。
私は彼に誘導されるまま研究を続けるうちに気鋭の研究者、現代の魔術師と呼ばれるようになっていた。
彼は魔術師を生み出したのだ。




