迷い鬼③
おばあさまは私を見つめる。
はじめてあったおばあさまははじめて美味しそうに見えた。
美人科学者として、その分野では有名だったが、変わった研究の事、科学や自然科学とは認めない人の多い分野だったが祖母の活躍により最新の科学となり、祖母の死とともに廃れていった。
よく写真やテレビ等で顔は知っている人物だった。
彼女は「おばあさまだなんて失礼ね」
といった。
いや、いくら鬼食い人として若さが保たれていても、血縁的に祖母なのだから、と私は思う。
だから私のこれまでの人生の知識がそう呼ばせた。
けれど私が見つめ直した祖母は笑みを浮かべていた。
全てを誰かのせいにして人食い鬼の本能を呼び起こす想像をした時に私が見せた笑みと同じ種類の笑みだった。
私は彼女の事をただ美しいと思った、強い生き物の孤高の姿。私は鬼でありながら人よりずっと弱かった。
だから人から逃げた。どれだけ周りに人がいて、時にあがめられても私は孤独だった。彼女とは真逆だ。
だから彼女の美しく孤高の姿が怖かった。
鬼よりも人ではない人がそこにいたのだ。
実の母、つまり祖父の娘の写真は見た事がない。
隠された母親だったし当然だ。
祖父は子供時代の写真や一応科学者として活躍していた頃の著書等から顔をしっている。
私は私の育ての母の事が思い出せない事に気づく。
生後まもなく引き取られ、15歳までは祖父の弟を父と思ってきた。
弟が3人いるのだ、母の顔を全く知らないのはどういう事だろう。
末の弟は6つ年が離れていたはずだがそれまでに母がいた記憶がない。
私は今恐怖で青ざめているだろう。
この女が私を育てていたのだから。




