迷い鬼②
私の産まれる前 一時代を築いた天才科学者は当時の姿のままだった。
「初めまして、ですね、おばあさま。」
私はそう言って微笑みかける。
どうすればよいかわからずに無理に作った笑顔。
「いい鬼に育ったわね」と返される。
祖母のお腹はグゥとなった。
祖母の妹には私は昔こっそりと会いに行った事がある。
もうかなり弱ってしまった時期だ。
彼女は祖父への愚痴を言ったが私の事は食べなかった。命の恩人である自らの姉の為に私を残した。
そして、自らの娘の事も何も話さなかった。有名アスリートに娘がいる事位はニュースかなにかでなんとなく聞いたことはあったが顔などは知らない。
リーナさんには面影はあるにはあったが私はギリギリまで気づかない。
ひょっとすると私の事はリーナさんの為にのこした可能性もあったが、一番可能性が高いのは選択を避けたという事だろう。
誰が生き残るか自分では決めたくなかった。
目の前の女性は違う。
1度死の淵をさまよい、死の恐怖が心に満たされた。
徐々に体が弱っていくがまだギリギリでなかった妹とは違う。
「私はやっぱり鬼なんですか?」
私は尋ねる。
人造人間であり、人造魔法使いであり、人造教祖であり、人造悪神の使い。
人造なんて言葉は自身のいたらなさへの言い訳に過ぎない。もっと単純に責任逃れと言い換えてもいい。
そして人食い鬼。
血が飲みたいと思った事はなく、人の肉を食いたいと思った事はない。度を過ぎた危害を加えてきた者を殺してやりたいと思った事はないないとは言わないが、僕の信者達のように実行に移した事はない。
本当にないのだろうか?
今日の祖母の言葉次第ではいつものように自分は人造人食い鬼だと言い出し、人を食い始めるのではないか。
私は自分が残忍な笑みを浮かべている事に気がつく。復讐の力を手に入れる。
鬼食い人である祖母に見られてはいけないと少し視線をそらす。そらしたその先に祖母がいた。
人食い鬼は年を取らない。30年前なら誰もがその姿を知っていた女性。鬼に対して有利に動く事の出来る。
鬼食い人が鬼を前にして腹をすかせていた。




