迷い鬼①
私にはかつて恋人がいた。
和音と名乗る由紀菜、彼女は私に世界を壊させないと言ったが世界とは和音の事であり和音は死んだのだ。
私が和音と思い込んでいた由紀菜は1度死んだふりして私の前から姿を消した。私は人食い鬼だから、由紀菜を殺した私の信者達、世界崩壊の為の大魔法の生贄達を、私がその時を待たずに怒りのまま食い殺すとでも思ったのだろう。
由紀菜を殺された私は怒りよりも悲しみが勝ち酒に溺れるだけだった。復讐をしても虚しいだけ。
それさえ虚栄だ。
投獄された1年は私の反抗心というものを既にズタズタに引き裂いていた。大切な恋人を殺されようが私はその相手を怖いとしか思えない。
いや、復讐によりまた投獄される事を考えるだけで恐ろしい。
信者達は私に自分達の思う私を押し付けている。
どんな言葉もきっと私の真意と離れた解釈をされる。
私はその皆の期待に対して取り繕いようのないほど外れた事だけは言わないように気をつけている。
人の世界にたった一匹の人食い鬼は人をたべる事も出来ずに人のふりをなんとかしようとしている。
信者達は夜も私を一人にはしない。夜中でも必ず誰かは起きて私のそばを離れない。最初は投獄時のトラウマから私がうなされ夜中に目を覚ます事があったからだか、今は私を監視しているのだろうか。
ふと彼等は本当に人なのか分からなくなることがある。
もう一度和音に会いたい。
和音だけが私を人食い鬼として見てくれていた。
私にはもう自分の生きる場所というのはないのだ。
人食い鬼といっても均されたうすい血筋、かすかに流れる血のみの人食い鬼。
人並みよりやや低い身体能力、人並みより低い生活力、魔法の力もない。
そんな私の前に「あなたを食べにきた。」という者が現れた。死んだと聞かされていた祖母である。




