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「本艦のエネルギー・シールドを停止せよ」

「な!?提督!」


シールド、つまりバリアを止めるなど。

まさに自殺行為ではないか。


だが、艦長もオペレータも、顔色一つ変えることなく提督の指令を遂行した。


「本艦のビームシールドを停止せよ」

「了解。シールド停止します」

「バリア縮小。・・・・・・70%、30%、・・・・・・オフ」


周囲を覆っていた、茶色い半透明の膜が、完全に消えた。

これで今、このフォーマルハウトを守るものは、自前の装甲くらいしかない。

敵の荷電粒子砲の攻撃どころか、副砲の一撃でさえ、安々と装甲を貫くだろう。


ミリエル少尉はスクリーンを見つめた。敵はまだ混乱しているだろうが、この旗艦がバリアを展開していないことを、いずれ見抜くだろう。

誰か一隻でもそれに気づいて発砲してこれば、そこで自分の、そしてこの間の搭乗員全ての人生は終焉を迎える。


荒い呼吸の音が聞こえた。

それが自分のものだ、と気づくのに、数十秒掛かった。


提督がストップウォッチをちら、と見つめた。


「シールド展開」

「了解。シールド展開!」

「バリア、展開します」


ゔん、と機械音がして、周辺にバリアが張り巡らされた。

一瞬置いて、視界が真っ白に染まった。バリアを喪失しているとみて、本艦への一斉砲撃が行われたのだ。


「ふう。・・・・・・間一髪だったね」

「て、提督!」

「ほぼ計算通りだ。・・・・・・艦長、アルデバランへ通達。40秒間、シールドを停止せよ」

「了解」

「提督!まさか、他の戦艦まで」

「次、アークトゥルスへ通達。アルデバランの次に、40秒間のシールド停止」

「はっ」

「こ、こんな、乱暴な作戦が」


ミリエル少尉は言葉を失った。

各艦を順番に、バリアを停止させ、そこへ敵の砲撃を誘おうというのか。

確かに、敵はそれを見て砲撃を集中させるだろう。一旦バリアを止め、エネルギーを蓄積しておけば、一斉砲撃にも耐えるかもしれない。さほどのフォーマルハウトのように。

その間に他の戦艦はエネルギーの消耗を抑えられる。長期戦となれば、先に敵のエネルギー切れを誘えるかもしれない。


だが、もう無茶苦茶だ。こんなもの、見抜かれれば次は「バリアを止めるであろう」艦を狙われる。

その時、その戦艦は____


どうっ。

巨大な振動が、フォーマルハウトの巨体を揺るがした。


オペレータが声を張り上げる。


「エネルギー・シールド停止中のデネブに砲撃命中、装甲大破!」

「脱出、間に合いません!デネブ、戦闘不能!轟沈します!」

「提督!」

「・・・・・・」


ごうっ、と巨大な戦艦が爆発四散し、微粒子がフォーマルハウトまで飛んできて、音が伝わらないはずの宇宙空間を揺るがした。


アラン・ケレスの顔色は見えなかった。

どう考えても、デネブの戦力と、乗組員たちは犬死だ。

何を考えているのか、後悔しているのか、いないのか。


「戦艦シリウスより通達。本艦、エネルギー・シールド停止後も砲撃なし」

「次、戦艦ベガより通達。本艦もシールド停止後の砲撃は来襲せず」

「よし」


提督が立ち上がった。


「全艦に通達。全ての艦のシールドをを停止せよ」

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