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4週間後、大規模な「船団」が来訪、地球全土を侵略した。
彼らは最初に、核兵器を保有する国家を狙った。最初の3時間で、あちこちの核兵器保有国家から多数のキノコ雲があがった。その大半は時間が経過した今でも、生き物が住めない土地となっている。
核弾頭を有していた国家は軒並み初日の攻撃で攻撃・破壊され、国土の大部分が放射能汚染を起こし、指導者たちは死ぬか、あるいは他の国へと逃げ去った。原子力発電所も攻撃の的となり、メルトダウンを防ぎ得なかった国家もまた放射能汚染区域となった。
そして、通常兵力にも圧倒的な差があった。
完全な自律型機械兵器____各国は用語を統一し、侵略者を「ミディオン」と呼んだ。
機械の発する音がその理由だ。その「兵隊」は作動する時、ミーディオン、と音を発しているように聞こえるからだ。
ミディオン兵たちは4本から6本の足を持ち、身長2メートルから3メートルほど。表面を硬い金属で覆われ、地球人の持つ大半の対人兵器では有効なダメージを与えられなかった。
強力な外骨格を持ち、なおかつ戦闘中、周囲に半透明薄い茶色で半球体状の「バリア」を張っていた。
自分たちの使うビームは通すこのバリアを、当時の地球人たちは破壊するどころかほとんど貫通させることさえできず、次々と敗北を積み重ねていった。
原子力兵器への攻撃後は、まともな兵力や軍事力を有しない国家が犠牲となった。母艦から降下したミディオン兵たちは、人間を一人たりとも逃さない、とばかりに狩り続け、虐殺し続けた。発電所は破壊され、通信は破断された。ダムが破壊され、下流に濁流が押し寄せた。
通信衛星は軒並み破壊され、電話回線や海底ケーブルも全て破壊・無力化された。
半年間の戦いで、地球人類は全人口の99%以上を損失、当時100億人を数えた世界人口は1億人以下へと減少した。それも各国の推計に基づく希望的データであり、実際には数千万人程度だった、とも言われる。
最終的に死者の30%程度は直接戦闘による被害であり、60%以上は貯蔵核弾頭・原子力発電所への攻撃による放射能汚染、治安悪化による人類同士の自滅・殺戮、食糧供給・流通破綻による餓死、医療体制破綻による病死、疫病の蔓延であったとも推測されている。
人類は有史以来初めて、滅亡への道を一直線に転げ落ちた。
しかし、そこからは人類もしぶとかった。
核兵器非保有国で原子炉や発電所を防衛、あるいは炉心融解を防ぎ得た国家が生き残り、通信を回復させて連絡を取り合い、僅かに倒し得たミディオン兵を解体・解析し、彼らに有効な兵器を次々と生産することに成功した。
大陸国はほぼ占領、あるいは汚染されていたが、対抗兵器の量産後、島嶼国家は次々と自国領内のミディオンを駆逐し、人類の居住地域を回復させた。
2033年現在、文明を維持し、工業力を保有し、国家としての体裁が保てているのは、古い領土の名称で日本、台湾、インドネシア、ニュージーランドだけである。
ミディオンは災厄だけでなく、人類が持ち得なかったテクノロジーを地球にもたらした。
計算機器のメモリ、CPUなどは大幅に進化した。特に小型で大容量の量子融合ジェネレーター、通称「フュージョン・リアクター」が開発され、大量の電力を個人が常時携帯できるようになった。あらゆる物質を「放り込む」だけで燃料化してしまうフュージョン・リアクターは、宇宙船の動力源からパワードスーツ、ビームガンの駆動電源としてだけでなく、ゴミ処理用としても幅広く使用されている。あらゆるゴミを放り込むだけで発電でき、あとはO2とCO2、H2O、窒素化合物しか出てこない。
地球人類はミディオンを憎みつつも、彼らの技術から多くを学んでいった。
2027年、日本のクサカベ博士によるパワードスーツ初号機が完成。ミディオン兵を個人が単独撃破可能となった。
同じ年、同博士による地上発射型の大気圏外攻撃ビーム砲が完成。ミディオン宇宙艦を次々と撃墜した。
2028年、マスドライバー完成。ミディオン宇宙艦のエンジンと、日本で整備途中であったリニアモーター・システムを改良した電磁カタパルトを用いて、多段階式ロケットを用いずとも大気圏外へと到達することが可能となった。
2030年、生き残った4カ国は連合部隊を結成し、ミディオン兵が比較的少なく、鉱物資源の多いオーストラリア大陸を奪還した。
2031年、月面のミディオン基地を逆占領。今ではこの年を宇宙歴元年、と呼称している。
そして現在、宇宙暦3年、西暦2033年に至る。
数年間かけて集めたミディオン艦を人類が運用・搭乗可能なまでに回収・改修し、なんとか21隻をかき集めることに成功した。
だが、対艦戦闘の成績は暗澹たるものであった。ミディオンが運用する艦は精密な射撃で地球防衛軍を翻弄し、月軌道内へと侵入しては月面基地への攻撃や、地球防衛軍本部のあるオーストラリア大陸への攻撃を行ってきた。
なんとか局所的戦闘に留まっていたが、ここにきて偵察衛星が脅威的な大艦隊の集結を、土星衛星「タイタン」上のミディオン艦隊駐留地点に捉えた。
これは地球防衛軍を滅ぼし、人類を絶滅するための艦隊である、そう地球防衛軍本部は判断し、今まで温存していた全艦隊の出撃、決戦を命じた。一人の男に全人類の命運を託した。
それが提督こと、アラン・ケレスという男である。




