ヘルト視点③──本体から分体へ
※※本体の身長は195cmと2m近いので、小さい子からはたいてい泣かれます(笑)
――ぱち。⋯クシクシ、んぅ〜。
瞬きをして伸びをする、先程とは違って視点が下になっているのを確認しながら、脳内へ呼びかける。
(こちら分体で意識接続、起動を確認。
これから屋内へ向かう。 意識同期も同時進行中。)
――――相変わらず、こちらで起動すると精神が幼少期に引っ張られる気がするな。行動が無意識に幼い気がする。
トテ、トテ、トテ⋯カチャ。
待機中だった椅子から降りて、栽培小屋の扉を開き、勝手口へ向かう。
外はまだ厚い雲に覆われてはいるが、やはり雨が降る気配は無い。
···ガチャ。
(···鍵をかけてない?)
「⋯私が忘れていたようだな。ここから侵入されたわけか。」
『栽培小屋の温室操作設定をする為、両手に荷物を持ったまま出た為だと推測。』
(まぁ、余所者に取られて困るものは、見えるとこにそもそも無いんだがな。)
『重要物資は主に魔道具で隔離されたメンテナンス室、地下倉庫に埋蔵してあるため火災時も鉄壁。』
(さて、ロフトに上がって侵入者の顔を見てみるか···。
いや。この場合食事を出しておく方が先か?)
『先程用意したミルク粥なら、皿に出しておけば粗熱が取れて火傷せず丁度良い温度になると推察する。』
(予め、よそっておく方が良さそうだな。)
台所横の踏み台をコンロ横に持ってくる。
火を止め、蓋を開けると、柔らかく煮込まれたミルク粥をのぞき込む。
「丁度良さそうだ。」
手鍋を持つと、壁に掛けてあったまな板を取り、リビングテーブルに向かう。
まな板を鍋敷として使い、大きめの匙で粥を器によそう。
鍋に蓋をすると、ロフトへ足早に向かった。
···ギシ、ギシ、ギシ。
小柄でも重量のある身体だからか、ハシゴを上るたび、軋む音が部屋に響く。
上まで上がりきると、子供の姿を探す。
(パッと見、みつからないが?)
『ベッド上のシーツと毛布が何枚か不明。』
(⋯?じゃあ、どこかで寝ているのか?)
『周囲に隠れられる所は、棚の中、衣装箱の中、ベッド下だと考察。』
(安直だが、それならベッド下が一番有り得⋯たな。居たぞ。)
『熟睡している模様。』
(起こすのは忍びないが、とりあえず降りて、食事を取りながら話を聞かせて貰う。)
『同意。分体なら脅威的な外見は皆無の為、安心だと思われる。』
(確かに。本体で対応した場合、寝起きだと確実に泣かれ、怯える未来しか見えない。)
「あー⋯。寝てる所すまないが、起きて貰えないか?⋯もしもし?」
布団に包まって寝息を立てている存在へ声をかける。
熟睡しているのか、警戒心が無いのか、声をかけただけではちっとも起
きない。
「もしもし、起きなさい。危害は加えない。とりあえずこんな山奥まで来たんだ。空腹だろう?」
丸くなった身体を、揺すりながら声をかける。
すると、ようやく毛布に包まれた身体から、ビクリと反応があった。




