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少女は世界の英雄と共に歩む  作者: 浅見 英理
侵入者と英雄⋯時々AI
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10/19

目の前にいたのは──ヘルト視点④


―――声が聞こえる。

小屋でかなりたてる商人や、険しい顔で指図する叔母夫婦の声じゃない。

優しい、気遣う声。

こんな声をかけられたのはいつぶりだろう⋯。


―――ゆさゆさ


ビクッと身体が跳ねた。

誰かが身体を揺さぶっている。

声が出かかったが、口を塞いで耐えた。


「もしもし、起きなさい。危害は加えない。こんな山奥まで来たんだ。空腹だろう?」



そういえば、ここは小屋でも荷馬車の上でもない。

寝ぼけた頭が一瞬で冷えていった。

私はただの侵入者だった。家のものからしたら異物でしかない。


それでも、声の主は優しい。

私に空腹じゃないかとまで気遣ってくれている。


包まっていた毛布からのっそりと顔を出し、声の相手をうかがい見る。


「――⋯⋯⋯⋯――」


直後、目に入ったのは、ふわふわした毛並みと、クリクリとした黒い瞳が私を見つめていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――



⋯―――薄く光る碧色と目が合った。

毛布から頭を出し様子をうかがう幼い子どもは、

興味深げに分体の顔をじっと見つめている。


『起床を確認。敵意は無さそうだ。性別は少女だと見受けられる。

食事の後は入浴を推奨する。』


「起きたか?下に粥を用意してある。降りよう。」


促すと、ベッド下からのそり、とゆっくり這い出て来た。

周りを警戒しつつ、自分が不法侵入したのは分かっているようで、おどおどと所在無さげに佇んでいる。


分体よりやや大きめで110cm前後というところだが、足や腕を見ると骨と皮が目立って見える。


『栄養状態が極めて不良。タンパク質摂取が必須要項。』


(早速、レンズ豆と干し肉を備蓄倉庫から回収する必要があるな。)


少女は、口をもごもごと何かを言いたげだが、言葉に出来ないようだ。


「――⋯⋯疲れていたんだろう?無理に色々と話さなくていい。まずは降りて腹を満たせ。」


話し終わると、ロフトのハシゴを降り、少女を待つ。


ギシ、ギシ、ギシ⋯


下から見守る際に、両方のふくらはぎに酷く大きな傷痕が見えた。

このせいなのか、少し足元がおぼつかないようにも感じる。


トテ、トテ、トテ⋯。


ットン、スッ、トン、スッ、トン⋯


少女は、やや足を引きずりながらついてきた。

椅子を引き、食事の用意ができたリビングの椅子に座らせる。


「熱くは無いはずだが、気をつけて食べてくれ。」


無言のまま、木匙を手に取ると少量口に運ぶ。

甘めの味付けにしたからか、食べると少しだけ顔が和らいだ。


「そのまま食べていてくれ。私がそばに居ると食べ辛いだろう。」


自分はテーブルから離れると、もう一度ロフトに向かう。


あいつが泊まる際に、着替えを置いていた衣装箱をあさる。

ゴソゴソと使えそうなものを吟味し、腰紐やシャツを箱から出していく。


―――次はベッドだ。

足が悪いのにロフトで寝かせるのも忍びない。

使っていないソファで寝てもらうしかないが、上よりは下の方が良いだろう。


使うものを重ねて腰紐でくくると、ハシゴを降りる。

ソファにかかるホコリよけを外すと、雑に畳んで床に置き、取ってきたものをソファに置いた。


振り返ると、食事をしながら目線で追っていたのか、少女と目が合う。


「おかわりもあるが、食べられるか?」


「⋯うん。」


少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかんで頷く。


トテトテとテーブルに近付き、蓋を外し手鍋から器へ粥をよそう。


「どうぞ。慌て無くていい、しっかり食べなさい。」


「⋯ありがとう。」


「まだ足りなければ、ここから自分でおかわりしてくれていい。」


コクリ。と頷くと、少女は盛られた粥をもそもそと食べ始めた。


それを見て、風呂場へと向かう。


脱衣場にタオルは常備しているが、石鹸など、普段使わないものは棚に片付けてある。

それらを出して、風呂の魔道具にタッチしてお湯を出し始める。



『ぬるめのお湯を推奨。37.8度が適温。』


(確かに、熱いよりぬるめの方が良いだろうな。

傷に染みるだろう。塗り薬も探してこなければ。)


湯はりの設定をして風呂場を出ると、完食したのか、台所の流しまで手鍋と皿を運ぶ少女に出くわす。


「片付けてくれたのか。ありがとう、助かるよ。」


「ご馳走さまでした。勝手に家に入って寝ていたのに、親切にしてくれて、ありがとう⋯。」


素直な、いい子だな。こんな子が何故こんな山奥に⋯。


『侵入者の目的を収集。』


(今はまだいいだろう。先に風呂に入って身体を休ませてからでも遅くはない。)


「気にするな。詳しい事は全部落ち着いてから聞く事にしよう。

風呂に入って、身体を洗って来るといい。一人で大丈夫か?」


「うん。」


「分からないことや、手伝いが必要なら壁にある紫色の魔石を押せ。声が通じるようになっているから。」


「わかった。」


先程取ってきた奴の服と腰紐を手渡す。


「サイズが合うものが無くてな。上着は腰紐で調節して欲しい。

下着は申し訳無いが男物しかない。紐で縛って調整してくれ。」


「うん。」


「今まで着ていたものは洗うから、風呂場のカゴにまとめて置いておいてくれたらいい。」


コクリ。


先頭を歩き、風呂場の扉を開けてやると、服を抱えて少女は中に入っていった。






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― 新着の感想 ―
エピソード10「目の前にいたのは」、読ませていただきました。 分体英雄くんの世話が完璧すぎます。✨ 少女に優しく声をかけ、料理を振る舞う。 服と寝床の用意もして、お風呂の準備まで!甲斐甲斐しく少女の世…
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