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少女は世界の英雄と共に歩む  作者: 浅見 英理
侵入者と英雄⋯時々AI
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11/18

これからどうする?



―――風呂の扉を閉めると、温かい空気で満ちていた。

脱衣所が先に作られてるようで、手前に棚とタオル、空いたカゴが二つある。

今まで着ていた服を片方のカゴに置くと、着替えとタオルをもう片方のカゴへ入れる。


衝立の奥からは湯気が漂っていた。覗き込むと、浴槽まである立派なお風呂だ。

衝立から奥は床が石畳になっていて、大人が一人余裕で入れる位の浴槽と、石鹸や手桶、木製の椅子が並んでいる。


挿絵(By みてみん)



服を脱いでから、自分の汚れた身体を見て、洗うのは何日ぶりだったかと考えてしまった。


多分、一週間以上入ってない。水を浴びることはあったけど、こんなにしっかりお風呂に入れるのは数年ぶりだ。


恐る恐るお湯に手を浸けてみる。

最初は熱く感じたが、慣れるとじんわり気持ちが良かった。

一気にお湯に浸かるのはためらわれて、手桶である程度体をすすぐ。


だけど。汚れがこびり付いていて、何度流しても滴るしずくは薄茶色だ。


―――仕方ないか。


ザブリ、と思い切ってお湯に入ってみた。


足の裏や手の甲なんかに出来た、細かな傷がお湯にしみる。

それをグッと耐えていると、あったかさが全体に広がってきた。


わたし一人で、広い湯船を使っちゃっていいのかなぁ。なんて考えながら、ちょっとだけ端っこに寄って温まる。


ホカホカしてきて、湯の中に居られなくなると、用意された石鹸を使って身体を洗い始める。


手桶で頭からお湯をかぶると、ガビガビだった髪の毛も少しだけ柔らかくなった。

石鹸も揉み込んで洗うと、茶色の汚れた泡が周りにしたたり落ちる。

すすいでは石鹸で洗って、を繰り返して髪の硬さが取れると、今度は体だ。


お湯で垢が浮いたおかげか、用意された植物のスポンジに石鹸を泡だてて擦ると、あっという間に茶色に変わっていった。


懸命に擦っては流すことを繰り返して、ようやく全身がきれいになった事を実感する。


―――少し強く擦り過ぎてヒリヒリするし。所どころ赤くなったけど。


もう一度お湯に入ろうか⋯揺らぐ水面を見る。

綺麗になった自分の姿が写り、つい、飛び込んでしまった。


―――ザッブーン!―――


思ったより盛大な音にビックリして、慌てて縮こまる。


――ピピピ、ピピピ――


壁に寄って見ると、紫色の魔石がチカチカ光りながら音を出していた。


―――タッチするだけで良いのかな?

ピタリと手のひらを魔石に当てると、やや焦った声が響いた。


「お湯の跳ねる音がここまで聞こえたが、溺れていないか?転んで湯船に落ちたのか?」


「…だ、大丈夫。ちょっと失敗しだけだよ。」


心配させてしまったようだ。恥ずかしくなり、顔が熱くなる。


「大事ないなら構わない。湯冷めするから、しっかり体を拭いて出て来なさい。」


「うん。」


これ以上心配かけるのは嫌だな、とお風呂から上がることにする。

石畳の床に残る汚い泡を残したくなくて、湯船のお湯でしっかり流した。


脱衣所に戻ると、タオルを広げて頭から水気を取る。

ガシガシとよく拭いて、全身の水気を拭き取った。


渡された服は、男ものだと言っていたが、胸元に組紐があり、腰紐もカラフルでなかなかにおしゃれだ。

パンツも短パンに近いもので、紐で難なく調整できた。


まだ髪からポタポタとしずくが落ちていたので、タオルをマントのように羽織ると、風呂場を出てリビングへと向かう。


「あぁ、出たんだな。そこのソファで寛いでいてくれ。今お茶を持っていく。」


挿絵(By みてみん)


フワフワの毛並みが、揺れながら茶器をトレーに載せてやってくる。

クリクリした目がたまらなく可愛くて、抱きしめたくなる。


「はい。少し、ぬるいが。今夜はソファで寝て欲しい。」


そういうと、ソファの上に畳んだ毛布を示した。


―――フワフワの毛並みにクリクリの目。

白い小さな子ぐまは、私よりほんの少しだけ背が低い。


それでも焦げ茶のエプロンを掛けて、器用に色んなことをこなしている。

無骨な喋り方と相まって、何となく恥ずかしがり屋なのかな、と思った。


「…親切な白くまさん、ありがとう。」


「例を言われるような事ではない。子どもは健やかであるべきだ。」


言い方は、何となく古臭いけど…。


「あなたの事、なんて呼べばいい?」


白くまさんは、少し考えるようにして言った。


「何とでも。好きに呼んでくれて構わない。」


「じゃあ、白くまさんて呼ぶね。」


小さくて可愛らしい見た目からか、つい笑顔を向けて話しかけてしまう。


「とりあえず、もう寝なさい。」


くるり。とそっぽを向くと、尻尾を揺らしながら、トテトテトテ…と歩いていってしまう。

しばらく見つめていたけど、台所の壁に遮られて見えなくなってしまった。


わたしはソファの上に畳まれた毛布を広げて、ふかふかのソファへと横になった。


―――明日は…これから、どうしよう。


ここで住まわせて貰うか、無理なら近くの町で、働き手を探すのも手かもしれない。

できたら、安全に生活できる場所だといいなぁ…。


そんなことを考えていたけど、あっという間に瞼が重くなってきて、暖かな毛布の中でいつの間にか寝てしまっていた。



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