まどろみの休息
口に咥えたパンを落とさないように、ゆっくりハシゴに足をかけ、一段一段を慎重に登る。
一番上まで登りきる前に、まずは目だけで様子を伺ってみる。
―――大丈夫、誰もいなさそう。
ゆっくり身体を持ち上げて、二階へと上がる。
上がりきると、邪魔でしかないパンは、唾液で柔らかくしながら食べきった。
満腹までは行かずとも、先程水はたっぷり飲んだので丁度いい。
部屋を見渡せば、上には大きめの採光窓と、タンスや衣装箱なんかが置かれていて、思っていたよりも広さがある。
物置にも使っているのか、大小様々な木箱が置かれていた。
上に人がいないのがわかったので、腕をのばしてハシゴをゆっくりと元の壁の場所へ引っ掛ける。
ハシゴを片付け、もう一度部屋を見渡してみると、左端にはベッドがあった。
上にはシーツと、布団が綺麗に畳んでおいてある。
―――どうやらここは、普段は使われていない客室のように見える。
フラフラとベッドのそばに座り込む。
窓から西日が差し込んでいたのか、手で触れるとほんのりベッドは暖かかった。
柔らかく畳まれた布団に、そっと顔を埋めると、お日様の匂いがする。
「ふわぁ、きもちい⋯」
緊張が切れたのか、とたんに疲れがどっと押し寄せ、ここで寝てしまいたくなる。
―――だけど、ここで寝てしまえば。
住人がハシゴを登れば、すぐに見付かってしまう。
ガバリ、と顔をあげるとベッドの下を覗き込んだ。
畳んでいた布団を脇に抱えると、ベッド下に入り込む。
ベッド脇にフットマットは敷かれていたが、下には何も無かった。
綺麗に掃除しているのか、ホコリはそんなに溜まっていないけれど、
自分の足を拭った布で少しだけ拭いてみた。
ある程度拭くとホコリが綺麗になったのでベッドの奥に転がす。
―――さすがに、ホコリで真っ白になるのは嫌だもん。
枕は畳んだシーツが何枚かあったから、それを貰おう。
布団に包まれば、すぐにわたしには気付かないはず。
そうして眠い頭で一生懸命寝床を作っていく。
ベッド下で布団に包まると、やっとゆっくり出来る場所になった。
―――とりあえず、今日は寝て。続きはまたあした考えよう。
暖かく完成した寝床に安心したのか、今度こそ緊張が緩み、すぐに眠くなり始める。
―――布団に包まったわたしは、ゆっくりと意識を手放した。
次に起きた時に、何が待ち受けているのか。この時は知りもしなかった。




