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少女は世界の英雄と共に歩む  作者: 浅見 英理
自由を掴むために
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2/19

真っ暗闇の森の中で




目の前は、ただただ闇が広がっていた。


たまに、木々の葉の切れ間から月が顔を覗かせ、星々が煌めくのが見える。


もう後ろを振り向いても、男達がくべていた火の明かりは見えなくなっていた。

足元のでこぼこした木々の根に躓かないよう、目を凝らして前に進む。


――いつ、わたしが逃げた事に気づいて、追いかけてくるだろう。


荒くなりつつある息を、懸命に殺しながら、一心に足を動かす。

引き攣れるように痛む足を叱咤して、ジメジメした方へ。



――たしか、なるべく下の方、地面がぬかるむ方向に水場がある、って。


いつか小屋の中の誰かと、森で水場を探す方法について話していたのを思い出す。

軍人上がりで、足を怪我して失って。家族を食わすため小屋に自分を売ったんだ、と話していた。

その男が誰かと話していた。


―――森に迷ったら、まず闇雲に動かず、周りに水音がないか耳を澄ませるんだ。

そして、地面が乾いているか湿っているかを見る。

なるべく泥濘んだり湿った方向へ進め。

そこが坂なら、下った方に水場があるはずだ。


さっき、逃げながらも周りに耳をすませたが、水音は聞こえなかった。

今までどれだけ食事が少なくても、水さえあれば何とかなった。

荷馬車を出る時に、パンも二つ手に入れてる。



―――きっと、なんとかなる。


―――まず、水は見つけておかないと。

そして、なるべく早く安全なところに。


少女は、望みを託して足を動かし続けた。

森の葉の間から日がうっすら差し込むようになると、今度は人目につかない、寝床にできそうなところを探し始める。


―――ここは寒そう。

―――ここは雨が降ったら濡れちゃうかも。



森には何故か動物の影すらなく、日が昇った筈なのに、ひんやりと薄暗いまま湿った空気が漂っている。


だんだんと足も引きずるようになり、痛みも我慢できなくなってきた。




――――――――――――――――――――――――――――




そしてようやく見つけたのは、少し大きめの朽ち果てかけた木。


幹が少女の頭の位置くらいから、雷で打たれたようにぱっくり割れている。


――あそこまでたどり着ければ、横になれるかも。


震える脚を持ち上げ、何度となくひっくり返りそうになりながらそこまでたどり着いた。


息が上がる。ゼェゼェと息をしながら見ると、自分の体が入るくらいの隙間があった。


中を窺うと、都合よく中には枯葉も溜まっていた。

リスの寝床だったのか、木の実なんかも転がっている。


一番広いとこから屈んで体をねじ込む。


――痛っ、いけど⋯何とか入れた。

ここなら大人は入って来られない、はず。


枯葉の上に縮こまる。転がる木の実を集め、布で包んでいた硬いパンをようやく齧る。


二口、三口と食べたところで、緊張の糸が切れたのか途端に瞼が重くなって来た。

うつらうつら、しながらパンを飲み下す。


そうして少女は、ぱたりと意識を手放した。






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― 新着の感想 ―
エピソード2読ませていただきました。 1に続いて素晴らしい情景描写です! 特に水を見つける時の回想の部分がすごいクオリティでした。 寝床となる朽ち果てた木の描写も詳しく、全体的に静けさが残った文章でし…
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