お昼ごはん②
改めて皿に向かい、木匙を手にとる。
「い、いただきます。」
いつも一人で食べていたものの、テーブルできちんと食事を取るのは、これで二回だ。
いつも地面に座り込んで、叔母に呼ばれる前に、人に取られないように。
味も確かめず急いで掻き込んでいたようなものだったから…。
目の前の湯気の立つ器を見て、口中に広がったものを飲み干し、お茶で落ち着かせた。
ワクワクしながら、木匙で肉を突くとブツリと半分に割れる。それとスープをゆっくり運ぶと息を吹きかけながら口へ入れた。
さっきの味見でも思ったが、肉や野菜の味が詰まったスープだ。
肉も硬すぎず、噛むとジュワッっとスープが出る。
根菜も豆もホクホクとして、たまに浮かぶキノコと一緒に食べる。
「ンぅふ~〜」
つい、口に入れたまま喋ってしまった。
腸詰めは燻製したものなんだろうか…噛むと燻された香りと肉汁が溢れ、ハーブが鼻を抜ける。
ついつい空腹で匙が進み、一皿めはあっという間に完食してしまった。
二皿めをお代わりしていいか、聞こうと台所に目をやる。
すると、その前に白くまさんがお茶を持って来ていた。
「気にせず二杯目も食べたらいい。残れば夕食はマトトを入れて味を変えるつもりだから。」
カップにお茶のおかわりを注ぎながら言う。
…そのマトト入りも食べてみたい。どんな味になるんだろ。
お茶も飲んでるし、お腹もそこまで空いて無いから二杯で終わらせておこうかな??
夕食も美味しいことは間違いないんだろう。食事を待ち遠しく思うなんて初めてだ。
「フゥ…ごちそうさまでした。」
おかわりの紅茶をさっき残っていたジャムとゆっくり味わうと、本当にお腹いっぱいになってきた。
食べ終えた食器をまとめると、台所へもって行く。
使い終わった皿を、流しに置き軽くすすぐ。
宿と違い、ここは魔導水栓らしく魔石に触れると水が出る。
「白くまさん、スープいろんな味が滲み出てすっごく美味しかった。まだ残りがあるから、夕食はマトト入りが食べたいな…。」
白くまさんが、出していたものをしまう手を止めて振返る。
「マトトは瓶詰めがあるからスープでもいいが、食べる頃に乾燥麦を足してリゾットにもできるがどちらが良い?」
えっ、あの美味しいスープをリゾットに?
絶対美味しい…。
「それじゃ、リゾットがいいな。…お皿は私が洗うね。」
夕食はスープだと思っていたので、思っていたものとは違うが、美味しそうなのは間違いない。
流しにある植物タワシで軽く汚れを流し、モコ実の入った網を濡らして揉むと泡が出る。
それで洗ったあとにすすぐと、布巾を下に敷いて食器を高い違いに並べて干した。
濡れた手をどうするか、手を垂らしたまま振り向くと、タオルを持った白くまさんが流しの下の取っ手にタオルをかけてくれた。
手を拭きながら訊ねる。
「わたしは何をしたらいい?普段のお仕事の手伝いができる…?」
「…普段は栽培する野菜の加工や収穫、保存、それから水と肥料管理、たまに洗濯や掃除をしている。」
「収穫はさっきの野菜だけ?」
「ああ。たいてい朝一で収穫して、形の悪いものは加工品や、今回みたいに来客時の食料となる。…あとは昨日の風呂水を使って洗濯や掃除があるから、それを手伝ってもらおうか。」
「洗濯、足で踏んで洗うのは出来ないけど板があればできるよ。」
「心配しなくていい。こう見えてもここは生活するには非常に機能的に作られている。一般より有意義に過ごせるはずだ。」
そういうと、使う道具や場所の案内をしてもらえることになった。
※乾燥麦…こちらで言うオートミールや、ビターバレーみたいなものです。
※干し肉…ひと括りで書いてます。
平たい干し肉、皮なし腸詰め、カルパス、普通の腸詰め、全てを指します。
冷蔵庫は魔石はあれど高級品。一般的に塩分多めと燻製にして、魔石付きの保管箱や保管庫
(冷蔵より劣るが小さな魔石で品質管理ができる箱)で管理します。
ちなみに、保管期間は約一月ほど。
※モコ実の入った網…こちらで言うムクロジです。名前は泡立つのでモコの実、安直です(笑)
ちなみに生肉などは経木を敷いてまな板で切り、汚れた経木は捨てるようにしてます。
強めの油にもこちらを皿に敷いて汚れを軽減し、皿に残る汚れは端切れや藁束で取り除いて洗う感じ。
水も少なく済むので皿洗いなどは一般的にこんな洗い方です。




