お昼ごはん①
白くまさんに名前があると言うこと。
見た目が本当の子ぐまみみたいな彼に、名前があるのなんて当たり前なのにそんなことすら頭から抜けていた。
「…じゃあヘルト、って、呼んだほうが良い?」
少し戸惑いながら訊ねると
「はじめから好きに呼んでくれて構わないと言っただろう?
白くまさん、が呼びやすいならそのままでも気にならない。 実際、町や村へ孤児支援なんかに行く際は、子ども等には白くまで定着しているからな。」
そう言って、あだ名みたいものだよ、と白くまさんが呟く。
「それなら、そのまま呼ぶね。」
ヘルトと呼ぶのをためらったのを察したのか、白くまさんは苦笑しながらわたしの頭を撫でた。
フワフワの毛からぷにゅぷにゅの肉球が額に当たる。
モチモチ、フワフワな掌は、頭を撫でられたのが久しぶりなことさえ忘れそうになるくらい心地良かった。
「…んふふふ…。」
うっとり撫でられていると、鍋から軽い笛がなった。
―――――プー、プー、プププ…プシュー…ッッッ
「丁度良く煮えたようだ。あとは味付けだけだが、味見してみるか?」
掌を下ろして、鍋へ向かうとカパリ、と蓋を開けた。
鍋からはモワッと湯気とが立ち上る。
肉と根菜の香りが詰まった湯気が部屋に広がった。
「ここに調味料があるんだが、小さじ1と、カップ3杯、缶の半分で入れてくれ。」
コンロ下の台に登り、小さな壷に入った灰色の粉、手鍋に入った金色のスープ、瓶詰の中を半分、と言われた通りに鍋に入れ、渡されたレードルでゆっくりかき混ぜる。
「この壷には塩コショウ、スープは鳥の出汁を溶かしたもの、瓶詰はハーブとオイルで漬けたマッシュルームだ。混ぜたら少しスープをすくって味を見てくれ。塩が足りないなら足すが、干し肉を入れたから大丈夫と思うんだが…。どうだろう。」
ふ~ふ〜とスープを冷ますと、ちびり、とレードルから一口含む。
根菜の甘みと、肉の旨味が口いっぱいに広がって、ハーブの香りが鼻を抜ける、ホッとする味だ。
「塩、足りなくないよ。丁度良い…と、思う。なんか、普段飲むスープと違って…いろんな味?がする。」
「さっき入れた、鳥の出汁からの旨味と、キノコの旨味も合わさってるから、単純なスープよりは複雑で美味いものになるらしい…私も味は知らないんだ。レシピは教えてもらったもの何だがな。」
苦笑いしながら頭をカリコリとかき、私の顔を見る。
「味が大丈夫なら、お昼にしようか。」
白くまさんが、リビングテーブルに木の鍋敷を置くと、蓋を取った鍋を置く。
私のほうが背が高いので、テーブルに置いてあった木の器を持つと、レードルからゆっくり中の具とスープをつぐ。
ホロホロにほぐれた肉とコロッとした根菜が見た目にも美味しそうで、口の中の涎が増す。
「私だけ食べていて良いの?」
「ああ、言ったろう?私は見た目に反して食事は摂れないと。エリィが食べている合間に後片付けをしておくから、気兼ねせず食べなさい。」
そう言うと、残っていた紅茶をカップに注ぎいれ、ティーポットと一緒に台所へ向かった。
※マトト…トマトです。赤や黄色があります。こちらと同じく旨味の権化です(笑)
ヘルトは栽培小屋でこれらを栽培して、ピューレ状にした瓶詰めなどに加工して販売もしてます。




