第54話 おもちちゃんと副委員長
「えっ……?篠塚……さん……?」
尾行していたのが御萩だと気づいたおもちは、戸惑いの表情を見せていた。
「どうして私を……」
「……何でもない」
御萩がおもちを横切ろうとすると、手を掴まれる。
「待って!」
「……っ!離して!」
「私に……何か用があるの……?」
「……別に」
その言い方は強くなかった。
「えっと……その……今日って時間ある?」
「……何よ急に」
「一緒に……お茶しない?」
おもちの提案に、御萩はきょとんとした表情を見せた。
駅前のカフェに入った二人はジュースを飲みながら話し始める。
「どうして……私を尾行してたの……?」
「……気になってたから」
御萩は膝の上にのせていた両拳を握りしめる。
「でも……私は真奈美のいじめに加担してたし……そんな私に話しかけられるのもおもちちゃんは嫌かなって思って……挨拶ぐらいしかできなくて……」
ポタポタと机に涙が落ちる。
「私……あれから自分を許すことができなくて……彼氏とも別れて……ずっと一人で生きていこうと思ったんだけど……おもちちゃんが眩しくて……
だから……おもちちゃんの友達にずっと嫉妬してた……」
学期末テスト後の稲見ちゃんへの態度もそういうことだったんだ……
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
泣きながら謝る御萩を見て、おもちがハンカチを差し出す。
「えっ……」
「これで拭いて」
おもちの顔を見るとニッコリ微笑んでいた。
自分に対して何一つ恨みがないような微笑み……御萩には眩しかった。
「……ありがとう」
「そろそろケーキも来ると思うし、食べながらお話しよう?御萩ちゃんのこと知りたいし」
「……うん」
丁度いいタイミングで二人が頼んだケーキがやって来た。
区切りが一つついたかのように―――
「……へぇ。おもちちゃんは読書が好きなんだ」
「うん。篠塚さんは読書好き?」
「普通かな。あと名前で呼んでもいいよ」
「じゃあ……御萩ちゃんは将来何目指してるとかある?」
「証券会社かな……まだふわっとしてるけど」
「そうなんだ。かっこいいね」
「そう?」
ケーキを食べながら話が弾む。
「……ところでおもちちゃん。一つ聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「斎藤君と付き合ってるよね?」
質問されて、少し恥ずかしそうな表情になる。
「う、うん……」
「どこを好きになったの?」
「どこを……そう言われると難しいな……」
ケーキを食べ終わり、口を拭く。
「気づいたら好きになってたけど……多分優しいところかな?」
「優しい人?他にもいるのに?」
「大翔君はね。高校に入って初めて私のことを気にかけてくれた人なんだ。人と関わるのが得意じゃなかった私に接してくれて……
段々話すうちに、大翔君のこと……好きだなぁって思っちゃった」
「……ふぅん」
御萩の表情が暗くなっていく。
「楽しいの?斎藤君といて」
「楽しいよ。もしかして大翔君とも友達になりたい?紹介するよ?」
「……いい」
不機嫌そうに紅茶を飲む。
「別に仲良くなりたいわけじゃない」
「……そっか」
「私、もうすぐバイトだから先に帰る。お金、ここに置いておくね」
財布から注文分の金額を置くと、席を後にする。
「じゃあまた学校で」
「う、うん。またお茶しようね」
御萩が立ち止まる。
「……えぇ」
返事をした後、そのままカフェを後にした。
駅までの道中、御萩はずっと独り言を呟いていた。
通行人はそれを見て、ギョッとしながら急ぎ足で通る。
「斎藤大翔……斎藤大翔……斎藤大翔……」
大翔の顔を思い出すたびに、イライラが加速する。
おもちと二人きりでいたところを思い出すと、さらに加速する。
「……あぁもう!」
御萩が叫ぶと、周囲の人がビクッと反応する。
(どうして……どうしてイライラするの?)
なぜ怒っているのか自分でも分からない。
「どうしたの?大声で叫んだりして」
振り返ると、涼真が立っていた。
「僕でよければ相談に乗るけど……どう?」




