第53話 おもちちゃんに忍び寄る影
とある日のLHR。担任が黒板に何かを書いていた。
書き終わると、生徒たちの方を見る。
「今日は委員会を決めていきたいと思います」
黒板には様々な委員会が書かれていた。
学級委員長・副委員長・体育委員・風紀委員・文化祭実行委員会・図書委員・美化委員の7つ。
学級委員長と副委員長はそれぞれ1名のみ。
その他の委員は2名の枠が設けられていた。
「立候補したい委員会がある人から名前を書いていってください」
しかし、生徒たちはなかなか立ち上がらない。
めんどくさいし、休み時間や放課後が削られるのが嫌だから立候補しないのだろう。
そんな中、おもちが立ち上がり、図書委員のところに自分の名前を書く。
それを見た、稲見も図書委員のところに自分の名前を書く。
「……!稲見ちゃんも?」
「うん!なんか面白そうだし」
「……そっか」
おもちが少し嬉しそうな表情になる。それを御萩がじっと見つめる。
「ねぇねぇ富鰭君は立候補しないの?」
「富鰭君が学級委員長とかだったら嬉しいな」
「富鰭君!私と一緒の委員になろうよ!」
女子たちに囲まれた涼真がニコッと微笑む。
「僕はいいよ。他にやってみたいことがあるから」
「やってみたいこと?」
「うん。僕、生徒会選挙に立候補したいと思うんだ」
「「生徒会選挙⁉」」
女子たちが驚いて顔を見合わせる。
「凄~い!ってことは生徒会長を目指してるとか?」
「うん。生徒の代表に立つっていうのを一回やってみたいんだ」
「さすが涼真君!」
涼真がチラッと大翔の方を見る。
「大翔君は委員会に立候補しないのかい?」
「……俺は別に」
「立候補しておいた方がいいよ?志望書にも書けるし」
大翔がギロッと睨みつけると、涼真の近くにいた女子たちがビクッとなる。
涼真はそれを微笑んで受け流す。
「何あれ感じ悪い。斎藤君ってあんな感じなの?」
「きっと涼真君をライバル視してるんだよ。同じ御曹司だし」
「だからってあんな睨み方する?」
「いいんだよ。僕は気にしてないから」
「涼真君優しい~もっと冷たくしてもいいのに……」
再び大翔の方を見ると、黒板の方に向き直っていた。
(怒らせちゃったかな……でも早く大翔君の目を覚まさせてあげないと……)
次々と生徒たちが名前を書きに行き、委員会の枠が埋まっていく。
「あと決まっていないのは学級委員長と副委員長だな。やりたい人」
……誰も手を挙げない。
「先生」
涼真が手を挙げる。
「学級委員長は優等生の大翔君に任せるのはどうでしょう?」
「確かにいい案ですね。斎藤君。どう?」
担任に聞かれて、大翔はチラッと涼真の方を見ると、微笑んでいた。
(……あいつ)
「斎藤君。どうかな?」
「……誰も立候補しないなら」
「なら、もう一度聞くね。やってみたい人」
……誰も手を挙げない。
「じゃあ……お願いしてもいいかな?」
「はい」
「問題は副委員長だな……誰か立候補……」
「先生。私、立候補します」
手を挙げたのは御萩だった。
「やってみたいと思ったので」
「本当?助かるよ!」
こうして、学級委員長は大翔、副委員長は御萩に決まった。
「よろしくね。篠塚さ……」
「先に言っておくけどあなたと馴れ合うつもりはないから」
「……えっ?」
御萩に拒否され、戸惑う大翔だったが担任が次の説明に入ったので、そのまま話を聞き始めた。
授業終わりのSHRが終わり、大翔はスクールバッグを持って、急いで教室を出ようとする。
「大翔君……今日何か予定あるの?」
「うん。ちょっと爺ちゃんに呼ばれててさ」
「そっか……」
おもちが少し残念そうにする表情を見て、大翔はとっさに抱き寄せる。
「……!」
「また明日」
急ぎ足で教室を出ていく大翔を、おもちは恥ずかしそうに見つめる。
「……」
「おもちちゃん愛されてるね~」
背後にいた稲見に気づかず、ビクッとなる。
「……!見てたの⁉」
「そりゃぁ目立つところでやってたらね~私も行かなきゃ」
またね!と手を振って、去っていく。
(今日一人か……)
いつも一人が当たり前だったのに、寂しさを感じる。
それだけ充実した毎日を過ごしていたということだろう。
(誰かと一緒にいることに慣れちゃったな……)
今日は帰って勉強することにしよう。
そう思い、教室を出て鍵を閉めると、その場を去る。
(職員室行くついでに先生に質問してから帰ろうっと)
おもちが去っていくところを遠くから見つめる人物がいたが、本人は気づかなかった。
鍵を返し、先生への質問も終わったおもちは学校を出た。
(今日のご飯は何かな~お腹空いたからいっぱい食べたいなぁ~)
のんきに歩いていると、背後から視線を感じて振り返る。
ところが後ろには誰も歩いていなかった。
(……気のせいかな?)
再び歩き始めると、電柱に隠れていた人物が再びおもちをつけ始める。
しばらく歩いていると、おもちがチラチラと後ろを警戒し始める。
(やっぱり気のせいじゃないかも……)
おもちが早歩きすると、後ろの人物も早歩きする。
(怖い……誰……?)
走り始めると、後ろの人物も走り始める。
少しの間走って、再び振り返るとそこには顔見知りの人物が立っていた。
「えっ……篠塚……さん……?」
御萩は尾行がバレたことに、焦った表情になっていた。




