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図書委員のおもちちゃん  作者: 鵲三笠
第二部

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第51話 二年生のおもちちゃん

四月初旬。制服を着た学生たちが一斉に光星学園に向かっていく。

光星学園は今日が始業式。

新学期、そして新たな学年への第一歩が始まろうとしていた。


(今日から新学期か……)


大翔が校舎へと足を踏み入れると、学生たちが一つの場所に固まっていた。

そこには新しいクラス名簿が壁に貼られている。

足を進め、固まっている生徒たちを避け、前に出るとクラス名簿を確認する。


(あったあった。斎藤大翔)


すぐ下には見覚えのある名前が書かれていた。


『善哉おもち』


(……!同じクラスだ)


心の中でガッツポーズをすると、嬉しそうにクラス名簿から離れた。



新しい教室の前に着き、ドアを開けると一年の頃のクラスメイトもいれば、知らない人たちもいる。


「大翔君!おはよう!」


稲見が嬉しそうに手を振る。彼女とは今年も……

いや、三年間クラスメイトのようだ。


「……同じクラスだったのか」

「えっ⁉知らなかったの⁉名前見てないの⁉」

「見たよ。おもちちゃんだけ一緒なのを確認して」

「ひどい!『私と一緒かな~?』とは思わなかったの⁉」

「別に。どうせクラス違っても遊びに来るだろ」

「……それはそうかもしれない」


前の黒板に貼られた座席表を見て、自分の席に座る。


「そういえば木島と絹漉は?」

「知らないの?あの二人は理系クラスだから一緒になるわけないじゃない」

「そうだったんだ。知らなかった」

「木島に至っては『大翔は絶対理系クラスだ!』って言って選んだからね。さっき来て文句言ってたよ?」

「何してるんだよあいつ……」


勝手に決めつけて……聞けばいいだろ。まぁ聞かれたくもなかったけど。


「ねぇねぇ。おもちちゃんは?」

「えっ?来てないのか?」

「うん……まだ荷物置かれてないから……」

「そっか……まぁすぐ来るだろ」


二人が話していると、隣の席に女子生徒が座る。


(すげぇ美人……)


座席表を見ると、彼女は篠塚御萩《しのづかおはぎ》という女子生徒らしい。


「……何?」


御萩が冷たい視線で大翔を見る。


「いや……えっと……」


慌てて視線を外すと、稲見が両拳で大翔の頭をグリグリする。


「痛たたたたた!」

「何見惚れてるのよ!可愛い彼女がいるくせに!」

「違うって!」


二人のやり取りを見て、御萩はチッと舌打ちして、どこかへ消えていった。


「ほら!大翔君が見惚れるから!」

「だから違うって!」

「何の話してるの?」


二人共ビクッとなり、振り返るとおもちが立っていた。


「おもちちゃん!よかった~休みじゃなくて」

「電車が遅延してたから……それで何話してたの?」

「聞いてよおもちちゃん!大翔君ったら……」

「やめろ~!」


二人がまた言い合っているのを、おもちがじっと見つめる。


「大翔君……私に言えないことなの?」

「気にしないで!河野が勘違いしてるだけだから!」

「勘違いって……あれはどう見ても……」

「だ~か~ら~!俺の彼女はおもちちゃんだけ!他の人に惚れたりは絶~~~っ対しないから!」


大声で宣言してしまい、教室がシーンと静かになる。


「……あっ」


大勢の視線が刺さったことで、思わず大声で叫んでしまったことに気づく。

おもちは恥ずかしそうな表情で、プイッと顔を背ける。


「あら~そうですか~なら信じましょう~」


稲見がニヤニヤしながら答えると、大翔は『こいつ……』と言いたい顔になる。

おもちは赤くなった顔を両手で隠すと、大翔の方を見る。


「……ありがとう。でも……次からは皆の前で言わないで……」

「はい……」


後ろの方から見ていた女子グループが舞い上がる。


「あの人かっこいい!」

「彼女さんに一途だし……最高の彼氏じゃん!」

「涼真君も彼女さんできたら一途なタイプでしょ?」

「ふふっ……まぁね」


大理石のように冷徹な美を放つ、涼しげな目元を持つ美少年が大翔を見つめる。


(それにしても……斎藤ホールディングスの御曹司である彼があんな子を彼女にするなんて……あの子は凄いのかな?)


涼真という少年の先には今も恥ずかしそうな大翔とおもちがいた。



始業式が終わり、全員教室に戻ると新しい担任が前で話し始める。


「では、皆さんには知らない人も多いと思うので自己紹介をしてもらおうと思います」


話すのは自分の名前・好きな〇〇・自慢できること・皆への一言。


「じゃあ……阿部さんから順番にお願いします」


出席番号順に自己紹介が始まる。次から次へと進んでいき、稲見の番がきた。


「河野稲見です!好きなアニメは『恋愛戦士ラブリーピンク』!自慢できることは元気いっぱいなことです!皆と仲良くなりたいのでよろしくお願いしま~す!」


パチパチパチと拍手が響く。


「次、斎藤さんお願いします」


大翔が立ち上がる。


「斎藤大翔です。好きな言葉は『人の心はお金で買えない』。自慢できることは……」


チラッと後ろの席に座るおもちの方を見る。目が合うとおもちは察したのか、恥ずかしそうにブンブンと首を横に振る。


(やっぱりダメか……)


おもちと彼女になれたことと言おうとしたが、拒否されたので別のことを言う。


「勉強を苦痛に感じないことです。よろしくお願いします」


拍手が鳴る。


「では次、篠塚さん」

「……はい」


御萩が立ち上がると、大翔をギロッと睨みつける。席に座った大翔がビクッと反応すると、視線を逸らした。


「篠塚御萩です。好きなことは読書。自慢できることはありません。よろしくお願いします」


淡々と話し、すぐ席に着くと遅れて小さく拍手が鳴る。


「次、善哉さん」

「は、はい……」


おもちが立ち上がると、クラスメイトたちがひそひそと話し始める。


(どうしよう……注目されてる……)


緊張するが、ゴクリと唾を飲みこみ話し始めた。


「善哉おもちです……好きなことは読書で……特に小説が好きです……自慢できることは……」


全員の視線が刺さる。それに恐怖を感じて口を閉じるが、勇気を出して小声で口を開く。


「大翔君の彼女になれた……ことです……よろしくお願いします……」


教室がシーンとなる。どうしよう……引かれたかな……

そう思っていると、大きな拍手が鳴る。


「二人共お似合い!」

「幸せになってね!」

「結婚式やるなら呼んでくれ!」


恥ずかしそうに席に着くと、大翔が恥ずかしそうに小声で話しかける。


「なんで⁉言ったらダメって言われたのに……」

「その……自慢できることこれしかないから……」

「そんなことないって!他にもあるでしょ!本に詳しいとか」

「あっ……」

「でも……ありがとう。そう言ってくれて嬉しい」


大翔の微笑みを見て、おもちも嬉しそうに微笑む。

再びクラスメイトの視線が刺さったことに気づくのは10秒後ぐらいだった。


「イチャイチャするなら学校終わってからにしてくださいね~」


担任の指摘で、二人の顔が赤くなり、クラスメイトたちが笑う。

だが、御萩だけは大翔をイライラした表情で睨みつける。


(何よ……なんでこの男にイライラするのよ私は……)


再び自己紹介が進んでいき、美少年の番となった。


「では次、富鰭さん」


美少年が立ち上がると、クラスの女子たちがわ~っとなり、注目する。


「富鰭涼真《ふかひれりょうま》です。好きな言葉は『学びとは誰にも奪われない一生の財産である』です。

自慢できることは父さんと母さんが僕の親で、大事に育ててくれたことです。

一年の頃のクラスメイトもいて、その人たちとは仲が良いですが、知らない人も多いのでぜひ仲良くしたいです。よろしくお願いします」


涼真が頭を下げると、一人の女子生徒が手を挙げる。


「涼真君は彼女いますか~?」

「それがいないんだよね~募集中で~す」


それを聞いて、女子たちがざわつく。自分にもチャンスがあるかもしれない……と。


(女子ってああいうイケメンが好きなの?わかんないなぁ~……私も女子だけど)


稲見が興味なさそうな顔をしている一方で、大翔はじっと涼真を見つめている。


(富鰭涼真……富鰭不動産の御曹司……確かクソ親父とあいつの父親が仲いいって秋山さんが言ってたな)


涼真が大翔と目が合うと、微笑んで会釈する。それを見て、大翔も会釈する。


(あの感じを見ると金持ち自慢のクソ野郎ではなさそうだな)



SHRも終わると、生徒たちが教室を出ていく。


「おもちちゃん。一緒に帰ろう」

「うん」

「大翔君~!おもちちゃ~ん!一緒にご飯行こう?」

「いいね。行こう」

「……少しは自重してくれよ」

「いいじゃん別に。どうせ春休みデートしたんでしょ?」


三人が教室を出ようとすると、後ろから涼真が歩いてきた。


「やぁ大翔君」

「……何?」

「少し話したいことがあるんだけど……いいかな?」

「……会社を交えた話じゃないなら」

「アハハ。もちろんそんな話はしないよ」

「それで?話したいことって?」


涼真がチラッとおもちを見る。


「大翔君って……善哉さんと付き合っているんだよね?」

「そうだけど?」

「どうして?善哉さんは凄い人なの?」


その質問にきょとんとするが、すぐに微笑みながら話し始める。


「……凄いよ。おもちちゃんは本に詳しいし、努力家だし……お母さん想いの優しい人なんだよ」

「……!大翔君……」


それを聞いて、おもちは少し嬉しそうな顔になる。

涼真は少し黙っていたが、やがて口を開く。


「……それの何が凄いの?」

「……えっ?」


大翔、おもち、稲見の表情が固まる。


「今の質問の意味は、家柄が凄いのか……何かを成し遂げた人なのか……それを聞いているんだよ。

でも今のを聞くと、ただの知識があって努力してるだけの人間で、凄い人ではないよね?」


無言で固まる三人をよそに、話を続ける。


「大翔君。君は凄い人間だっていう自覚はある?僕はね……君のことを尊敬しているんだよ?

斎藤ホールディングスという上場企業の御曹司であるにも関わらず、それを自慢しない。金で人を釣るような行為もしない。初めてだよ。

金持ち家庭の子供でそんな聖人に出会うのは……」


涼真が感動したように話し始める。


「だからこそ!大翔君は凄い人と付き合うべきだと思うんだ。容姿端麗、成績優秀、スポーツやコンクールで賞を取るような人と!それなのに……」


冷たい視線をおもちに向けると、おもちはビクッと怯える。


「こんな大福みたいな子と付き合うなんて……大翔君騙されてるよ?どうせ金持ち狙いだよ。こういう子は」


涼真がおもちに近づくと、おもちは恐怖で後ずさりする。


「ちょっと!」


稲見が止めようとするが、その腕を振り払う。

壁際まで追い詰めると、バン!と壁ドンする。


「善哉さん。大翔君と別れてよ。君は大翔君の彼女にふさわしくない」



第二部開幕―――




[あとがき]

まずは更新が延期になってしまったことをお詫び申し上げます。

本日より毎週木曜日に連載し、不定期で金曜も更新します。

涼真や御萩がクラスメイトになったことで、物語は新展開へと進んでいきます。

どうなってしまうのか……楽しみに更新をお待ちください!


鵲三笠

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