第47話 テスト終わりのおもちちゃん
「そこまで。解答用紙を前へ」
試験時間が終わり、後ろの席に座る生徒たちが前の席に座る生徒へ解答用紙を渡していく。
(よし……今回も全科目点数高いはず)
おもちは試験が終わったことにとりあえずホッとする。
「次の登校日は来週……だな。その日に試験の結果発表と1年生の成績発表をする。2年生になると勉強も難しくなるから、今のうちにしっかり復習しておくように」
「「はい!」」
担任の連絡が終わると、生徒たちが一斉に教室を出る。
(どうしようかな……大翔君と一緒に遊びに……)
スクールバッグを持って、教室を出ようとすると制服の裾を誰かに掴まれた。
「……えっ?」
振り返ると、掴んでいたのは御萩だった。
「篠塚さん?どうかしたの?」
「……あのさ」
御萩が口を開くと、稲見がやって来た。
「やっほーおもちちゃん!テストも終わったし!カラオケ行こう?」
「稲見ちゃん……」
元気よく誘った稲見だったが、御萩の存在に気づく。
「えっと……お話し中だったかな?なんかごめん……」
「お話し中っていうか……」
すると御萩は無言で裾から手を離し、教室を去る。
去り際に稲見を睨みつけると、そのまま廊下の奥へと消えていった。
「うわぁ……あれ絶対何か言いたかったやつだ……悪いことしちゃったな……」
「そうなの?」
「うん。めちゃくちゃ睨みつけられたもん。怖かった~」
それを聞いて、おもちは御萩の顔を思い浮かべる。
(私に言いたかったこと……何だったんだろう?)
その頃。御萩は誰もいない廊下で怒りを爆発させていた。
「クソ……!」
壁に拳をぶつける。痛い。でも何かにぶつけないと怒りを抑えられなかった。
「何にムカついてるのよ私……」
何に対して怒っているのか、自分自身でも理解できない。
しばらく居座っていたが、結局怒りの正体が分かることがなかった。
カラオケにはおもちや稲見の他に大翔と正樹も集まっていた。
稲見がアニソンを歌っている間、大翔はフードメニューを開いていた。
「カラオケって歌えるだけじゃないんだな……」
「大翔君はカラオケ初めて?」
「うん。おもちちゃんは?」
「私も……歌うの恥ずかしいから……」
「僕はおもちちゃんの歌聞いてみたいけどなぁ~」
正樹がジュースを飲みながら口を開く。
「おもちちゃんの声可愛いから、歌も上手いんじゃないの?」
「そんなことないよ……皆より下手だと思うし……」
「そうかな?」
歌い終わった稲見が、皆の方を向く。
「次、誰が歌う?」
「おもちちゃん!」
「えっ⁉」
正樹の突然のフリにおもちが驚いた顔になる。
「えぇ~恥ずかしいよ~」
「お願い!一回だけでいいから!」
「……大翔君が聞きたいって言うなら」
正樹と稲見の視線が大翔に移る。
「……こっち見るな」
「いやだって大翔君に委ねられてるからさ」
「頼む!聞きたいって言ってくれ!」
おもちの顔を見ると、少し恥ずかしそうな表情でこっちを見ている。
嫌がっているわけではなさそうだ。
「……聞きたい」
「……分かった」
おもちが端末を操作する。
「何歌おうかな……何でもいい?」
「もちろん!おもちちゃんが歌うんだから!」
「じゃあ……『ドライフラワー』で……」
「絶対上手いじゃん……」
夜。カラオケを終え、四人は駅へと向かっていた。
「はぁ~いっぱい歌った~!」
「ほとんど稲見が歌ってたよな。僕たちはポテト食べてたけど」
「皆が歌わなさすぎなの!それにしてもおもちちゃん上手だったね!」
「えっと……ありがとう……」
「それにしても意外だったな~大翔君が音痴だったの」
「……悪かったな」
大翔が少しムッとすると、おもちの肩がくっつく。
「私は良かったと思うよ。大翔君の歌……刺さったし」
「そう?下手なのに」
「ううん……歌声じゃなくて……」
大翔が歌っていた『愛唄』。
その歌詞を大翔から発せられることに少しドキドキしていた。
「何?」
「……内緒」
「えぇ……」
この気持ちは、大翔には明かさずに胸の内に秘めることにした。
(この先……誰と共に人生を歩みたいかって聞かれたら……大翔君って答えるよ)




