第46話 感謝を伝えたいおもちちゃん
桜が満開に咲き誇る光星学園には多くの生徒―――いや、卒業生が集まっていた。
(来ちゃった……卒業式……)
おもちは桜の花びらが風で舞う中、校舎へと入っていく。
在校生は生徒会を除き、卒業式の出席義務はない。
だが、おもちはどうしても卒業式に出席をしたかった。
感謝を伝えたい人が……卒業してしまうから。
(会えるかな……雪宮先輩……)
雪宮穂乃花―――稲見と喧嘩した時や大翔の恋人になった距離感の相談にのってくれた優しい先輩。
距離感の相談をしてから穂乃花とは一度も会えていない。
三年生なのは分かっているが、どの学科かは分からず、生徒数も多い。
教室を一つずつ探すというのは、人見知りのおもちには難しかった。
そして訪れてしまった卒業式。穂乃花に会える最後のチャンス。
(ううん……会う。お礼を伝えなくちゃ!)
おもちは校舎の中へと入って行った。
体育館には大勢の人が集まっている。教職員、後援会、生徒会、保護者等が席に座っている。おもちは席数が少ない在校生席に座る。
(やっぱり在校生で来ている人は少ないなぁ……)
部活動や委員会の後輩と思われる生徒がちらほらいるが、少数。
席も余裕で確保することができた。
在校生はテスト期間も近いし、卒業式後に先輩と合流する人もいるのだろう。
「卒業生、入場」
担任の後ろから卒業生たちが入場してくる。
(あっ……あれが雪宮先輩かな?)
少しだけだが、穂乃花の姿が見えた。
(久しぶりに見たけど……変わらないなぁ……)
優しくて、愛嬌ある体型。
そこにいるって分かっただけで安心できる存在。
(雪宮先輩からしたら私はちっぽけな存在だったかもしれないけど……それでも……)
自分にとって穂乃花は……大きな影響を与えた存在であった。
卒業式が終わると、卒業生たちは友達や家族、お世話になった先生たちと団らんする。
「卒業しても絶対会おうな!」
「あんなに成績がひどかったあんたが卒業できてよかったわ」
「先生!また遊びに来ますからね!」
多くの卒業生の中から穂乃花を探すため、おもちはあたりをキョロキョロ見渡す。
(……!いた!)
視線の先に、楽しそうに友達と会話する穂乃花がいた。
「うちら、卒業しちゃったね」
「そうだね」
「ぐすん……」
「ちーちゃん⁉どうしたの?」
「穂乃花ちゃんと……美咲ちゃんと離れ離れになるの嫌だよぉ……」
「全く……」
美咲と呼ばれた人がハンカチを貸すと、ちーちゃんは涙を拭く。
「会えなくなるわけじゃないでしょ?」
「そうだよ!またうちらで女子会しようよ!」
「ぐすん……うん!」
ちーちゃんが穂乃花と美咲を抱きしめる。
「二人共!大好きだよ!」
「うちも大好きだよ」
「私も」
三人は微笑み合って再会を約束した。
「……あっ!」
穂乃花はおもちと目が合う。
「ごめんね。ちょっとだけ離れる!」
二人の元を離れると、おもちの元に駆け寄る。
「おもちちゃん!久しぶりだね!元気にしてた?」
「……は、はい!卒業おめでとうございます!」
「ありがとう!誰かの卒業を祝いに来たのかな?」
「えっと……雪宮先輩にどうしてもお礼を言いたくて……」
「……えっ?うちに?」
穂乃花がきょとんとする。
「私……雪宮先輩に出会えて本当によかったと思ってるんです。見ず知らずの私に声をかけてくれて……私の相談に乗ってくれて……」
おもちが頭を下げる。
「ありがとうございました」
それを見て、穂乃花はクスッと笑う。
「そんなこと気にしなくていいのに~」
「それでも……どうしても伝えたかったので……」
「ありがとう。うちもおもちちゃんに出会えてよかった!よかったら連絡先交換する?」
「……!いいんですか?」
「もちろん!また困ったことあったら相談してよ!」
穂乃花はおもちと連絡先を交換すると、手を振ってその場を去った。
「今度ご飯行こうね!いっぱい食べれるところ!」
「はい!」
穂乃花を見送ると、スマホを見つめる。
(てっきりもう会えないって思ったけど……また会えるんだ……)
嬉しそうに穂乃花のメッセージアカウントを見つめた。




