第38話 放課後を共に過ごすおもちちゃん
昼休み。図書室に多くの生徒が集まっていた。
前に先生が立ち、集まった生徒に向かって話し始める。
「これより、図書委員会を始めます。よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「今日皆に集まってもらったのは、もうすぐ『読書推進週間』だからです」
読書推進週間。それは教師や図書委員が図書室にある本でおすすめの本を紹介し、本を読む生徒を増やすことを目的とした、毎年開催しているイベントである。
「期限は一週間。それまでに私に提出してください」
図書委員全員に、おすすめの本を紹介するプリントが配布される。
おもちも受け取ると、プリントをじっと見つめる。
(おすすめの本……何を紹介しようかな?)
放課後、図書委員の仕事があるおもちは、室内を回って本を探す。
(私はどの本でも読めるし、面白いって感じるけど……皆はそうじゃないから読みやすい本じゃないとダメだよね?)
皆が読書をしないのは他の娯楽が強いからだと思っている。特にスマートフォン。
ちょっとした暇つぶしも、スマホでできてしまう。
読書より、インターネットの方が面白いという人が多いのだろう。
(本はやっぱり漫画を読む人が多いけど、図書室には漫画ないし……だとすると……)
小説の本棚がある場所に移動する。
(小説だったらドラマ化や映画化しているのも多い。ドラマや映画が好きな人もこの学校にはいるはず……)
小説を紹介すると決めると、後は読んで面白かった話を紹介するだけ。
どれを先に読もうか悩んでいると、図書室に誰かが入ってきた。
「おもちちゃ~ん。あれ?いない?」
「あっ……大翔君……」
おもちの声に気づくと、大翔がおもちの方を見る。
「あっ……いたいた。仕事中?」
「うん。今度、『読書推進週間』だから紹介するおすすめの本を探してたの」
「そうなんだ。おもちちゃんがおすすめする本ってどんな本何だろう?楽しみだな~」
「そ、そう?」
それを聞いて、おもちが少し嬉しそうな表情になる。
「そうそう。ここに来たのは本を返しに来たんだ」
スクールバッグから借りていた本を取り出す。
「分かった。返却手続きしておくね」
「ありがとう」
「じゃあまたね」
「えっ?」
おもちがカウンターに移動して、返却手続きをする。
それを少し寂しそうに大翔が見つめる。
「……?帰らないの?」
「えっと……今日忙しいの?」
「そんなことないけど……」
「じゃあ……一緒に居ていい?」
「……!」
おもちの頬が赤くなる。
「……うん」
手続きを終えた本を本棚に戻すと、ドキドキしている自分に戸惑う。
(私と居たいって思ってくれているのかな?)
大翔の方を見ると、おもちの視線に気づいて笑顔を見せる。
(私も……)
大翔の元に近づくと、手を握る。
「……!」
「私も……大翔君と一緒に居たい……」
「……そっか。嬉しい」
お互い顔を見ると、また照れてしまった。
席に座り、二人は読書をし始める。おもちは小説、大翔は起業家のエッセイだ。
「ねぇ。放課後って人来ないの?」
「来るけどずっと図書室にいる人はいないね。授業終わった後に貸し出しと返却してそのまま帰る人が多いよ。あとはたまに先生が来るぐらい」
「そっか……じゃあおもちちゃんの担当日はここに来ようかな」
「えっ?」
「二人きりになれるでしょ?」
「……うん」
おもちの頬が赤くなっていることに気づいた大翔は、顔をじっと見つめる。
「……な、何?」
「赤くなってるなって」
「えっ⁉嘘⁉」
恥ずかしそうに、両手で顔を隠す。
「恥ずかしかった?」
「うん……」
おもちの小声が聞こえる。
「……嫌じゃなかったらさ。見せて」
「ふぇっ?」
「おもちちゃんの可愛い顔が見たい」
「い、嫌だよ……今赤いもん……」
「ダメ?」
「……」
顔を隠していた両手が、ゆっくりと下に移動していく。
やがて、顔が見えると柔らかい頬が赤くなっていることが分かる。
「可愛い……」
「可愛くないよ……」
大翔の右手がおもちの左頬に触れる。
「……!」
「柔らかい……」
人差し指がぷにっと頬に沈む。
「あっ……」
触れられることに恥ずかしさを感じるおもち。
「大翔君……」
大翔はじっとおもちの顔を見つめる。聞こえていないのだろうか。
繰り返し人差し指を頬に押し付ける度にぷにっとなる。
「大翔君さすがに……恥ずかしい……」
「あっ……」
声が聞こえたのか、頬から手を離す。
「ごめんね。つい……」
「大丈夫……」
離した後、大翔は右手を見つめる。
おもちの頬に触れた感触を今も思い出せる。
「その……本に集中したいから……これ以上は……」
「……そうだね。ごめん」
二人は読書を再開する。だが……
(触られた……触られた……)
自分の頬を……
(肉付きいいって思われちゃったかな……恥ずかしい……)
大翔も本は開いているが、視線は自分の手のひらだ。
(もう一回触らせてくれないかな……)
その後も二人は本の内容が頭に入ってこなかった。




