表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヴァイス・リヴァイバル〜果てなき世界の調律録〜  作者: 琥珀
第1章 『The Maiden's Requiem』
49/56

48.対キメラ⑩

 研ぎ澄まされた闘気が自身へと向けられたことで、『スカイ・ブラー』の生存本能が強く刺激され、目の前の敵を必ず屠れと、本能が激しく訴えかけていた。


 しかし同時に接近することにも強い警戒を発しており、軽率に仕掛ければ自身の生存が危うくなる危険をはっきりと察知していた。


 目の前の敵を仕留めるか、それとも相手を避けて標的を変えるか。



【キ゛イ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!!!】



 二つの選択肢の中で、『スカイ・ブラー』はマキナをこの場で仕留める道を選んだ。


 いま背を向けることこそが最も危険であると、本能がそう結論づけた。


 自分に敵意が集中したことを感じ取りながらも、マキナは待ちの姿勢を崩さない。


 『スカイ・ブラー』が空中にいる以上、攻撃を仕掛けるには跳躍するしかない。


 だが跳躍してから取れる行動は一度きりで、その一撃を躱されれば、着地までの僅かな時間が隙となる。


 加えて跳躍の最中に姿を消されれば、さすがのマキナでも一瞬は見失い、その刹那の遅れが致命傷をくらう隙になりかねない。


 だから待つ。徹底して待ち続ける。


 両者は睨み合ったまま動かず、少し離れた場所で続く『ヴェノム・ストーカー』との戦闘音が耳に届く。


 その戦闘音の中でもひときわ激しい衝撃音が響いた瞬間、『スカイ・ブラー』が動いた。


 姿を消すことなく急降下し、一直線にマキナへと襲いかかる。


 むやみに不可視となって警戒を強めさせるよりも、予測不能な動きで意識を乱す方が有効だと判断したのだろう。


 凄まじい速度で距離が一気に詰まり、『スカイ・ブラー』の体躯がマキナへと直撃するその瞬間───攻撃が空を切った。



「上空からの降下速度は驚異的だけど、そのまま地面に叩きつけられたら自分だって無事じゃ済まないから、必ず滑空するよね」



 どこからともなく、今しがた狙っていたたはずの標的の声が響く。



「瞬間的にスピードを出せても、滑空したら絶対に速度は落ちる。しかも滑空する時は翼を広げる必要があるから、体積も広がる」



 声は自分の身体よりさらに下方から聞こえてくるが、マキナの姿は見えない。


 それもそのはず、彼女の肉体は膝から上を地面と水平に折り曲げ、『スカイ・ブラー』と平行する姿勢をとっていたからだ。



「要するに、隙だらけってこと」



 その姿勢のまま、マキナは剥き出しになった『スカイ・ブラー』の腹部へ全力の拳を叩きつけた。



【キ゛ィ゛ア゛ァ゛!!!!】



 腹部に叩き込まれた衝撃に身体をくの字に折り曲げながら、『スカイ・ブラー』は苦悶の叫びを上げた。



「(直前で羽ばたいて衝撃を逃がされた。上げた声ほどダメージは入ってない)」



 後屈状態から滑らかにブリッジの姿勢を経て立ち上がったマキナは、呼吸を整える間もなく再び拳を構えた。



「(今のは真正面から分かりやすく来てくれたから対処できた。でも姿を消した状態であの速度を出されたら、反撃までは難しいかな)」



 マキナの一撃を受けた反動で再び上空へ舞い上がった『スカイ・ブラー』は、一定の距離を保ったままマキナをじっと観察する。



「(今の攻防で警戒心は強くなったはず。時間をかけてくれるのはミアリーさんの調整の時間稼ぎには助かるけど、それで標的を変えられても困るし……)」



 『スカイ・ブラー』はマキナたちの頭上を旋回するばかりで、なかなか攻撃に移ろうとしない。


 マキナにとって最悪なのは、『ヘヴィ・ブロッカー』がガイルを無視して合流を図る行動を取られること。


 動きが鈍く地上でしか活動できなかった『ヘヴィ・ブロッカー』と違い、『スカイ・ブラー』は自在に空を飛ぶ。


 跳躍して攻撃を仕掛けることは不可能ではないが、身動きの取れない空中へ自ら飛び込むのは危険が大きすぎる。


 だからこそマキナは敵意を引きつけて、『スカイ・ブラー』の行動を縛りつつ、地上に立つ自分へ狙いを定めさせるためにあえて動かない選択を取った。


 先ほどの一撃でわずかな迷いは生じたようだったが、最終的にはマキナという脅威を優先したらしい。



「(でも不用意に攻めてくることはなくなったかな。距離を取って仕留める算段を立ててるみたい)」



 時間にして十秒ほどの静止だっただろうか。緊張に張り詰めた空気の中、両者が睨み合い、やがて『スカイ・ブラー』が再び動き出した。



「(保護色(ステルス)!!)」



 旋回の途中でその姿がふっと掻き消え、マキナはさらに意識を研ぎ澄ませた。



「(大丈夫。姿は見えないけど空を裂く音は聞こえてる。あとは空気の乱れを感じ取れれば対処できる)」



 自分の周囲に薄い膜を張るように感覚を広げ、反射だけで動ける状態へ整えていく。



「(来た!!)」



 空気の乱れを捉え、本能に身を委ねてマキナは回避行動に移るが、その直後、違和感を覚える。



「(『スカイ・ブラー』の攻撃は躱したのに、通り過ぎた気配が無い……?)」



 『スカイ・ブラー』の体躯は優に二メートルを超える。


 羽ばたきの重い風切り音はもちろん、攻撃を回避すれば周囲には飛行によって生じた後流が現れるため、それはマキナにとって見逃す筈のない痕跡だ。


 しかし今、そのどれもが感じ取れなかったことから、『スカイ・ブラー』はマキナの予測した地点を通過していないことを意味する。



「ッ!?」



 直後、真横から叩きつけられた衝撃がマキナの身体を打ち据え、骨ごと軋む感触とともに身体が宙に浮き、何が起きたのか理解するより先に視界が激しく回転する。


 それが、いつの間にか側面へ回り込んでいた『スカイ・ブラー』の一撃だと気づいた時には、すでに地面へ叩きつけられ、何度も転がされていた。



「うっ……ゴホッ!!」



 どうにか立ち上がろうとするが、打撃を受けた半身に力が伝わらず、身体が言うことをきかない。



「(半身の骨がボロボロ……それに鼓膜と三半規管がやられて、平衡感覚がないや)」



 常人なら耐え難い激痛であるにも関わらず、マキナはどこか他人事のようにそれを受け止め、歯を食いしばりながら『スカイ・ブラー』へと視線を向けた。



「(どうやって私の意識をすり抜けたんだろう。確かに気配は感じ取ったはずなのに……)」



 強力な一撃を与えても尚、マキナへの警戒心は高いままなのか、『スカイ・ブラー』はすぐには追撃してこなかった。


 マキナにとっては好都合で、ミキミキッ!!という不快な音を伴いながら砕けた骨が組み上がっていくのを感じつつ、ゆっくりと思考を巡らせる。



「(私が感じ取れる範囲には確かに入ってきてた。でもそこから音と気配に差が生じた……音……差異……)」



 三半規管の感覚が戻り始めた頃、一つの仮説が思い浮かぶ。



「(そっか、音だ。『スカイ・ブラー』は探知範囲に入った瞬間、超音波を応用して、私が感じ取った気配と実際の位置をズラしたんだ)」



 最後にバキッ!!という一際大きな音が鳴り、崩れていた半身が完全に修復されると、マキナは片腕をぶんぶんと振って感覚を確かめ、改めて『スカイ・ブラー』を見据える。



「(姿が見えないだけでも厄介なのに、音まで操って位置を誤魔化せるんだ……五感が頼りなのに、その感覚を騙せるとなると、めんどくさいなぁ)」



 口元に滲んだ血を拭い、マキナは再び拳を構える。



【キ゛イ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!!!】



 反撃が来なかったことで攻撃の有効性を確信したのか、『スカイ・ブラー』の唸りには先ほどまでの慎重さに代わり、わずかな昂揚が混じっていた。



「(今ので『スカイ・ブラー』に余裕与えちゃったかな。焦って攻めてくることは無くなるだろうし、下手したら『ヴェノム・ストーカー』の方へ向かっちゃうかも)」



 じりじりと、互いに距離を測りながら牽制し合う。



「(でも、そろそろ……)」



 次の一手が戦局を大きく動かすそんな張り詰めた状況の中で、これまで意識の外へ追いやられていたミアリーがはっきりと呟いた。



「準備、完了です」

※後書きです



ども、琥珀です。


この『スカイ・ブラー』。蝙蝠とトカゲの能力を併用させてるんですが……

おかしくない、ですよね?


本日もお読みいただきありがとうございました。

次回の更新は明日の朝7時頃を予定しておりますので宜しくお願いします。


評価やブックマーク登録、リアクションも大変励みになります。


もし面白い!面白そう!と思っていただけたら是非宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ