episode80
「待って!!怜!!怜っ!!」
「美幸?!社長は?!」
「......分からない。でも何人でもいいからここに来いって......」
「どうやら倉庫?の様ですね」
皆、喜子の無事を願いながら美幸のスマホを覗き込む。
すると、美幸がとんでもないことを言いだしたのだ。
「......オレ、一人で行ってくるよ!!」
「ハァ?!危険すぎんだろう!!」
「そうですよ。狙いは美幸君なのですから......」
「でもみんなが行って騒ぎになったらそれこそ、事務所の、"LUMINOUS"の危機だよ?!」
美幸の一言で誰も何も言えなくなってしまった。
......ドームツアーが控えている中問題を起こすのはご法度すぎる
。どうしたものかと悩んでいると、黒川と白田がやって来た。
美幸は思わず黒川に抱き着いた。
「よ、美幸?どうかしたの、か?」
「......姉さんが、姉さんが攫われた。オレのせいで」
「喜子さんが?!」
間髪入れずに驚きの声を上げたのは白田であった。
無理もない。今の二人は婚約者なのだから。
「一体何があったのか、説明してくれ」
黒川が冷静に問うと、美幸達は事細かく説明をした。
結局、桐生が犯人であったこと、そして攫われた喜子の代わりに美幸に来るよう要求してきたこと。
「......なるほど。相手の目論見は美幸を手に入れるだけでなく、"LUMINOUS"を世間から消し去ろうと言うことだろう」
「......どういうこと?」
「アイドルが一般人に手を出すなんて立派なスクープじゃねぇか。だからそれも狙いの一つだろう」
「でも!!行かないと姉さんが!!」
美幸が心配をしていると、黒川はどこかに電話をかけ始めた。
――一体どこへ?美幸達が疑問に思っていると、黒川は美幸のスマホに送られてきたマップを自分のスマホに移し、それをどこかへ送っている。
「っし。これで完了っと。使えるもんは使ってなんぼってやつだぞ」
「「「「「「?」」」」」」
「オレちょっくら出てくるわ」
***
「あぁ、美幸に会うのなんて何年ぶりだろう......楽しみで仕方ないよ。姉想いの君だからきっと来てくれるよね」
「......怜君、貴方変わったわね」
「?オレはもともと美幸しか見ていませんでしたよ?なのに、お姉さん......モデルなんかにさせるんですもん。あのスクープだってホントは撮りたくなかったけれど仕方なく、ね」
「......水島もぐるなわけ?」
「もともとヤツが売れ始めたのはオレの写真のお陰ですからね!!ちょーっとお願いしたら協力してくれましたよ」
美幸もエライやつに目をつけられたな。
そう喜子が思った瞬間、外が何やら騒がしくなっていた。
――一人じゃなくてもいいと言ったがこんなに騒ぎになるか......?
次の瞬間、倉庫のシャッターがガラガラと音を立てて開かれる。
――そこにいたのは、念願の美幸。ではなく、大勢の警察官と、その先頭に立つ黒川であった。
「な?!なんで警察が?!」
「よー。桐生さんよう。オレの美幸に手ぇ出そうとしたみたいだな」
「!!お前が、美幸の!!オレは認めないぞ!!」
「お前なんかに認めてもらわなくて結構。......やれ」
黒川の掛け声で警察が一斉に動き出し、あっという間に桐生はお縄に。
なんともまぁ、あっけない終わり方だな。
「......黒川君、貴方一体何者?」
「あー、それはおいおいってことで。早く帰りますよ。美幸が待ってます」
「......貴方の優先順位が美幸で嬉しいわ」
黒川は喜子からそう言われると返事はしなかったものの、耳の赤さが答えを物語っていた。
その一方で、警察に連行されながら、桐生は薄気味悪く笑いながら「美幸......」と呟き続けていた。その声には未練と執着がにじんでいる。
けれど、もう彼が美幸の前に現れることは二度とない。
――こうして美幸を巡る一連の騒動は幕を閉じた




