episode79
翌朝、喜子は事務所のポストに何かが投函されているのを発見する。
......何やら嫌な予感がするが、その封筒を取り出すと、中はずしりとした重さであった。
「......一体何が入っているの?」
封筒には差出人の名前は書いておらず、宛名に【美幸 所属事務所 御中】とだけ書かれていた。
――誰かに見られる前に確認した方がよさそうね。そう思い、封筒を開封する。
中からはこれでもかと言う程の美幸の写真が詰まっていた。思わず喜子は顔を強張らせた。
「これは......事務所に入る前、これはモデルになってから......これは、子供の頃の写真?」
どれもこれも驚かされるものであったが、子供の頃の写真に写っていたのは......子供の頃の美幸と【桐生 怜】であった。
そこには、【大切な思い出】と書かれていて、何気なく裏を見てみると――
『これから迎えに行くからね』
そう書かれていたのを確認すると、喜子は素早くスマホで美幸に電話をかけた。
『......もしもし、姉さん?』
「貴方、まだシェアハウスよね?!」
『う、うん。そうだけど......どうかした?』
「今日の予定は全部キャンセル!!美幸は一切外に出ないで!!......そうね、黒川君にも来てもらいましょう」
『ちょっとちょっと!!いったいなにがあったの?!......いいから落ち着いて、ね?』
喜子の焦りを含んだ声に美幸は驚きながらも、喜子を落ち着かせようと、宥めた。
すると、喜子は「ごめんなさい......」と言い、落ち着きを取り戻す。
『ゆっくりでいいから何があったか教えて?』
そう美幸が促すと、喜子は例の写真の話をした。
――そして、犯人が桐生 怜であると言うことも。
『......そう。怜が、ね』
「貴方にとって信じたくないことかもしれないけれど......これで確定だと思うの。だからしばらくの間、仕事はキャンセルにさせてもらうわよ。いいわね?」
『......迷惑かけてごめん』
「何言ってるの。私達姉弟でしょ?」
『......うん。ありがとう』
そう言うと喜子は通話を切った。
――すると、コンコンと扉を叩く音がする。
この時間に出社する社員はほとんどいない。嫌な予感がするが、喜子は「どうぞ」と扉に向かって声をかけた。
ギィと音を立てて開いた扉の先には、桐生 怜の姿があった。慌ててスマホを適当な相手にかけ桐生と対峙する。
「怜君久々じゃない。どうしてここへ?」
「嫌だなあ、喜子さん。分かってる癖に」
「......美幸なら来ないわよ」
「大丈夫!嫌でも来たくなるから!!」
そう言うと桐生は喜子の首筋にスタンガンを当て気絶させた。
そして車に乗せると、早速美幸に電話をかけた。
......が、なかなか出ない。痺れを切らせた桐生は美幸のLINEに喜子とのツーショットを上げる。
するとすぐに折り返しの電話がかかって来た事に歓喜した。
「もしもし!!美幸?!」
『怜!!姉さんに何を......!!』
「あぁ。お姉さんは人質。オレが会いたいのは美幸だけだよ!!......だからこれから送るマップに来てね!!あ、一人じゃなくてもいいよ?こっちも複数人いるから!!
――そう言うと桐生は通話を切った。
さて、オレだけのお姫様はいったい何人のナイトを連れてくるのか。楽しみだ。
そう言わんばかりに口元に笑みを浮かべた。




