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推しゴト!!  作者: 朱音小夏


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episode75

ホテルを出た美幸は、まだ酒が残っているのか、ふらついていたため、水島に支えられながら歩いていた。


「......大丈夫?タクシー呼ぼうか?」

「......平気です。少し休めば......」

「無理はよくないよ?ほら、あそこに公園あるからそこで少し休もう」


そう言うと、二人は公園へと足を向けた。そして、水島は美幸をベンチに座らせると、自販機でミネラルウォーターを買って美幸へと差し出した。


「ほら、水でも飲みな?」

「......ありがとうございます。......あの、水島さん」

「ん?」

「......ホントに写真、消してくれますか?」


水島は、なんだか残念そうな顔をしながら「もちろん」と答えた。


「それが約束だからね。......それにしても」

「?」

「妬けちゃうな。君にそこまで思われてる彼に」

「......水島さん」


水島は一瞬目を伏せると、ベンチに座っている美幸の前にしゃがみ込み目線を合わせる。そして、美幸の頭をぽんぽんと優しく撫でた。


「こっちこそごめんね。好きな人がいるはずの君に意地悪しすぎた。......さ、もう大丈夫かな?あまり遅くなると君の想い人さんが心配するだろうからね」

「......はい。水島さん」

「ん?」

「......ありがとうございました」


水島は手を振りながら美幸の元から去って行った。そして、美幸も水島とは反対方向に足を向けたのだった。――だが、その一部始終を隠れたところから見つめている人物が一人。その点に握られているのは使い込まれた一眼レフカメラ。カシャ。カシャッ。ホテルに出入りする二人、水島に支えられている美幸。――そして水島に頭を撫でられている瞬間。


「......これは言い値で売れるな」


そう言うと、男はその場から去って行った。




翌朝。目を覚ました美幸の隣にはいてほしい人物はいなかった。


「......一樹、さん?どこ??」


温もりすらもなくなっていることに、不安を覚えていると。部屋の扉が開かれた。


「起きたか」


そここにはコーヒーを片手に持つ黒川がいた。


「......一樹、さん?」

「よく眠れたか?」

「は、はい......」


黒川は微笑んでいるが、何処かぎこちない。


「......どうしたんですか?」

「......」

「......オレに言えることじゃないんですか?」

「......流石に隠せない、か」


黒川はスマホを美幸へと差し出した。


「これを見てくれ」

「......?」


スマホ画面に映し出されていたのは一つの芸能ニュース。その見出しはと言うと――


『話題の新人モデル"MIYUKI"、深夜に人気俳優とラブホテルへ?!』


「......え?」


美幸は一気に血の気が引くのを感じた。記事には昨夜撮られたようであろう写真が掲載されていた。そのどれもが顔がはっきり確認できるものであった。


「......違う!違うんです、一樹さん!!オレ水島さんとは何もなくって!!」

「......安心しろ。オレはお前を信じてる。......何があったか教えてくれるな?」

「......はい」


美幸は昨夜の出来事を洗いざらい、全てを黒川に話した。嘘で二人きりにされたこと、写真で脅されたこと。酒を飲まされホテルに連れ込まれたこと。


「......でも、水島さんは......最後には何もしませんでした。だから......」


黒川は只々黙って優しく抱きしめてきた。


「......かずき、さん?」

「大丈夫。大丈夫だから泣くな」

「......え?」


美幸は気づかないうちに涙を流していたらしい。流れ始めた涙はなかなか止まる事を知らなかった。


「好きです。......オレが好きなのは一樹さんだけです......!!」


黒川は美幸を抱きしめながら、姿のないカメラマンに睨みをきかせていた。


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