episode73
朝からそんなやり取りをしている中、澪里がスマホの画面を見ながら絶叫し始めた。
「どどど、どうしたんだ?!」
「ヤバい!やばいよ!!トレンド入りしてる!ドラマだけじゃなくて"MIYUKI"の名前も!」
そう言いながら澪里はSNSの画面を皆に見せた。
「......ホントだ。トレンド入りしてる......スクショもアップされてるじゃん」
「"謎のモデル、ドラマデビュー!!"ですって。名前が売れる事はいい事よ!」
「......?あ、ごめん着信が......あ、水島さん」
「出なくていい」
水島からの着信と聞くと黒川は途端に不機嫌そうな声を出した。しかし出ないわけにはいかない。美幸は"大丈夫"と言い黒川に抱き着くと彼が固まった隙に電話に出た。
「もしもし」
『あ、MIYUKI君?SNS見た?凄いトレンド入りしてたよー』
「見ました。ビックリですよ」
『それで、よかったら今日お祝いしない?良いお酒の居酒屋知ってるんだ』
美幸は黒川を見た。美幸の表情を見てなんとなく話の内容を察した黒川は両手でバツを作ってみせた。
「......お誘いは嬉しいんですけど、オレは二人きりの飲みはしないように言われてて......」
『二人きりじゃないよ?』
「あ、そうなんですか?なら行こうかな......」
『そう来なくっちゃ!じゃあ、マップ送っておくから十八時にその店で』
「はい。失礼します」
美幸が通話を切ると真後ろに鬼の形相で立っている黒川がいた。......オーラがとてつもなく恐ろしい。
「何故行くと言った?」
「だ、だって他の人も来るって言ってたし......」
「もし来なかったら?」
「......その時は、すぐ帰る」
「本当だな?」
「約束します」
「もし仮に二人きりじゃなくても、その後二人きりで二次会行こうと言われたら?」
「それはないよー!オレ男なんだから。ね?心配しすぎ」
黒川は全然納得していない様子であったが、束縛しすぎて嫌われてしまうのも避けたい。......ここは理解ある彼氏をみせるしかない、か。
「......分かった。だが、二次会にはいくな。奴と二人きりにはなるな。......飲みすぎるな」
「うん。オレ、一樹さん以外とそう言う関係になりたくないから。安心して。ね?」
「今日、飲みが終わったら、迎えに行く。だから帰る場所はオレの家な」
「......ん」
そんな二人のやり取りを見て他の面々は、"過保護"、"ラブラブ"などと思い始めたのだった。そんな周囲の視線を浴びて我に返った美幸は黒川を突き飛ばそうとしたが、がっちりホールドされたためびくともしない。
「か、一樹さん......!」
顔だけでなく耳まで赤くなり、全身がじんわりと火照っていく。――恥ずかしい。そんな思いとは裏腹に、黒川の腕の中は不思議と心地よく、美幸は小さく肩をすくめるしかなかった。




