episode71
今日はいよいよ美幸の主演ドラマの放送日。シェアハウスにはLUMINOUS、喜子、白田、そして黒川が集まっていた。美幸はこんな大勢で見るとは思わなくて恥ずかしさがMAXになっていた。
「......何も皆で見なくてもよくない?」
「何言ってるのよ!貴方の晴れ姿!皆で見ないでどうするの??」
「......ハァ。いいよもう。好きにして」
美幸はそう言うと全員分のコーヒーを淹れにキッチンに行った。それを見た黒川は席を立ち、続いてキッチンへと向かった。
「美幸、手伝うぞ」
「あ、一樹さん!ありがとうございます。翔汰さんと澪里さんは砂糖とミルクがないと飲めないので、その棚に入ってるセット出してもらってもいいですか?」
「あぁ」
そんな二人の様子をリビングから見ていたメンバーは思わず顔を見合わせ微笑んだ。
「あぁーあ。あんなにイチャイチャしちゃって。皆とキスした時はファンサだと思って甘々な雰囲気にならなかったのにね?」
「は?澪里。どういう事?あなた達美幸にそんなことしたの?」
「ははは......。ついつい」
黒川は思わず、運んできたコーヒーを零しそうになったが、なんとか踏みとどまり、テーブルにマグカップの乗ったトレーを置くと、美幸の方へと振り向く。美幸は汗をだらだらと流し、黒川と目を合わせる事が出来ない。
「......どういう事だ、美幸?キスさせたのか?」
「ち、違......う......こともないんだけど......不可抗力と言いますか......そ、そう!付き合う前に一回だけあったハプニング!」
「ほう。ハプニング、ねぇ......」
黒川は美幸の腰を抱くと、顎をクイッと持ち上げキスをしてきた。......それも深いものを。
「あ......んン、あ、ふっ......う」
「もう二度とオレ以外には許すなよ?」
「は、はい......」
このキスにより、美幸は腰砕けになってしまった。そんな二人を見ていたメンバーも、黒川の変貌に驚きが隠せなかった。
「く、黒川さんって、地の性格はあんなオラオラ系なの?」
「仕事できるクールな人間かと思っていたのに......」
「黒川君の意外な二面性ね......でも、美幸にはあぁ言うタイプの人が合うかもしれないわ。って、ほら!ドラマ始まるわよ!」
喜子の一声に皆リビングでコーヒーを飲みながらの鑑賞会が始まった。美幸にとって映像作の処女作となる主演ドラマ。美幸はなかなか見れそうにもないが、黒川の足の間に座らされてがっちりホールドされてしまって逃げられない。
「監督も良かったって言っていただろう?自信もって見ればいいさ」
「うぅ......オレちゃんと演じられたかな?」
「もちろん。現場で見てたオレが保証してやる」
「一樹さん......」
もう完璧二人きりの世界に入りきった美幸と黒川であった。
ドラマが終りエンドロールが流れると、誰からともなく、「凄い」との呟きが部屋に響いた。するとそれを皮切りに、賛美の声が飛び交ったのだった。そんな様子をみて、喜子は腕を組みながら言った。
「決まりね!今度からドラマのオファーも積極的に受けていくわ!さぁ、忙しくなるわよ!!」
その言葉に、リビングは沸き上がった。美幸もなんだか照れ臭そうに笑う。そんな中、黒川は美幸の耳元でそっと呟いた。
「......オレの恋人、格好よすぎるだろう」
その囁きに、美幸は再び顔を真っ赤にするのであった。
「......そんなこと言われたらもっと好きになっちゃいます」
その一言に、今度は黒川が照れ臭そうに目を細めたのであった。
「それならこうするのはどうだ?」
「?」
「......どっちの方が相手をより好きでいられるかゲーム」
「それなら一生終わりは来ませんね(笑)」
「あぁ。負ける気はしないからな」
テレビにエンドロールが流れる中、リビングにはみんなの笑い声が響き渡っていた。その空間は美幸にとって幸せなものであった。恋人がいて、仲間がいて、帰る場所がある。それまで独りぼっちだと思っていた美幸にとってかけがえのない"宝物"になった。




