episode70
甘い夜を過ごした翌朝、美幸が目を覚ますと黒川の腕の中にいた。黒川の寝顔を眺めていると、彼に対する愛おしさがぐんぐんと増してきたのを感じた。
「......愛してます。一樹さん」
「それは目を覚ましている時に言った方が嬉しいんだが?」
「うわ!え、起きて?!」
美幸がビックリしていると黒川は抱きしめる腕に力を入れた。まるでもう逃がさないと言わんばかりに。
「腰、大丈夫か?かなり激しくしてしまったが......」
「!!......少し重たいかも、です」
「コーヒーでも淹れてくる。美幸は横になっていろ」
黒川はそう言うと美幸の額に口づけを落とす。そして寝室を後にした。美幸はしばらくボーッとしていたが、ひとつ、間を置くとボンッと音を立てて顔を真っ赤にした。
「お、オレとうとう一樹さんと......。は、恥ずかしい!!」
美幸はベッド縁に腰掛け、枕を抱きしめてそのまま顔を埋めた。黒川が寝室を戻ってくると、もんもんと悶えている美幸の姿があり、黒川はクスッと笑った。
「初体験、どうだった?」
「......そんなこと聞くなんて、一樹さん意地悪です」
「まぁまぁ。ほら。コーヒーでも飲め」
「......ありがとうございます」
黒川の淹れたコーヒーは砂糖とミルクが入った甘いものであった。いつもシェアハウスで飲む時はブラックだったので少し意外だ。
「一樹さん、コーヒーは甘めが好きだったんですか?」
「いや、......運動した後は甘い方がいいだろう?」
「......変態」
「その変態が好きなのはどこの誰だ?ん?」
黒川がいやらしい質問をしてきたため、美幸はコーヒーを持つ手がびくりと震えた。それに気をよくした黒川は、マグカップをベッド横のチェストに置くと、美幸の前に跪いた。そして、美幸の手を握ると「ありがとう」と口にした。
「え......?ありがとうって?」
「いや、オレの事を受け入れてくれただろう?オレはそれがとてつもなく嬉しい」
「......恥ずかしかったけど......一樹さんの事を愛してるから、貴方の全てを貰えたのが嬉しい」
「美幸......オレも。オレも愛してる。オレの元からいなくなったりするなよ?消えたりなんかしたら地獄の果てまででも追って行く。覚悟しておけ?」
黒川は一見クールな仕事人間だが、愛するものに対する執着は半端ないもののようだ。意外と束縛が強いタイプか?と思ったが、『もう逃がさない』という黒川の愛情が、美幸はどうしようもなく愛おしく、嬉しく感じたのであった。これからもこの人の隣にいたい。そう思いながら黒川の手を握り返したのであった。




