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推しゴト!!  作者: 朱音小夏


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episode68

そして始まったMV撮影。MVのモチーフは"一人の青年を取り合う五人の男達"。美幸は仕事とはいえ推し達から囲まれる事に胸をドキドキと踊らせていた。いざ、カメラが回ると、翔汰はキスをするくらいの距離で顔を近づけ、晴はそっと美幸の肩を抱き、澪里は背後から美幸に抱き着く。理は美幸の顎を持ち上げ美幸と見つめ合い、聖は耳元で囁く。まるでファンサの嵐の様な撮影に美幸は心の中で『心臓が持たない!!』と叫んだ。


「......随分と楽しそうですね」

「え?!そ、そうですか?」

「えぇ。いつもの仕事の三倍は楽しそうですよ」


黒川は『これも仕事、これも仕事......』と言い聞かせ、なるべく嫉妬をしないように撮影を眺めていたが、ついつい美幸に突っかかってしまう。


「こ、これも仕事ですからね!......オレは皆の事"推し"としか見れていませんから!!」


そうは言ったものの、黒川は気づいていた。いくら自分達の関係を認めたとはいえ、LUMINOUSのメンバーはいまだに美幸の事を想っている事に。だからこそ、この撮影で美幸が心変わりしないかが不安になっているのであった。


「......美幸」

「はい?」

「あまりオレ以外の男に可愛らしい反応を見せたりするな。不安になるだろう」


そう耳元で囁くと、美幸は耳を押さえ顔を真っ赤に染め上げた。


「こ、これは演技です!......相手が一樹さんだと思って演じてるんですよ?」

「!そ、そうか」

「だから安心してください。オレの気持ちは貴方だけの物です」


急に男らしい事を言うものだから、今度は黒川が顔を赤くする番だった。『全く。オレの恋人は可愛らしくも男らしい』と心の中で呟いた。


「それじゃ、オレ撮影に戻ります」

「......あまりできませんが応援しています」


そうして美幸は撮影へと戻って行った。残りは最後のシーンのみ。美幸が演じる主人公が誰とも結ばれることを許されず涙しながら5人の元を去るシーンだ。美幸は演技で泣くなんて初めての経験のため不安に思った。そんなときチラリと黒川の方を見ると、女性スタッフと談笑している姿が見えた。それに美幸の心はぎゅうっと締め付けられた。『あぁ、こういう事か。本来はオレ達だって結ばれる事は許されないのだから』そう思うと自然と涙が出てきそうになった。


「それじゃあ、ラストシーン!MIYUKIさんお願いします」


美幸は神経を集中させ、先程の気持ちを思い出すと、自然と涙が出た。そして、美幸演じる主人公は誰にも告げずたった一人で街を後にするのであった。


「カーット!OK!MIYUKIさん良かったですよ!」

「......ありがとうございます」


そうして一日がかりでの撮影を終え黒川の運転する車で家路につく。最中、黒川は「今日の撮影は良かった」と感想を口にした。しかし、美幸の心はここにあらずだった。


「......美幸?どうした?」

「一樹さんは......いや、なんでもないです」

「?今日はシェアハウスでいいのか?」

「いえ。一樹さんの家に行きたいです」


美幸は腹をくくった。ドラマ放映まで待っていられない。早く黒川の物になりたい、と。


「......本当にオレの家でいいんだな?」

「はい。今度はオレから言わせてください。......恋人として貴方の全部が欲しい」


その言葉を聞き黒川は路肩に車を停め、シートベルトを外し美幸の唇を塞いだ。そしてそっと離すと、


「分かった。......今晩は覚悟しておけ」


そう言うと再びシートベルトをし、車を走らせた。美幸の顔が真っ赤に染まっていたのには気づかないふりをして。


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