episode65
昨晩は黒川の本当の姿を目の当たりにし、ドキドキで一睡も出来なかった。朝起きると、黒川は昨晩の事がなかったかのように、いつも通りの爽やかさで「おはようございます」と声をかけて来た。
「お、おはようございます。一樹さん」
「よく眠れましたか?」
黒川は美幸が眠れていないのに気がついていてこんな質問をしてきている。それに気がつくと美幸は顔を真っ赤にしながら、黒川をポカポカと叩いたのであった。
「アハハ。可愛らしい猫パンチですね」
「――!!もう!一樹さんは意地悪です!昨夜オレが寝れなかったのに気づいてる癖に!!」
「ん?眠れなかったんですか?......今日は出掛けるよりホテルで二人きりでゆっくりしたいって事か?」
「ち、違います!ほら!朝食に行きますよ!」
美幸が部屋を出ようとすると、黒川は後ろでクツクツと笑っていた。
「朝食チケット忘れてるぞ?」
「あ......」
「まったく。おっちょこちょいだな」
「うるさいです!早く行きますよ!」
二人は朝食会場に着くと、LUMINOUSのメンバーや、森に撮影スタッフがもうすでに朝食をとっていた。
「お、やっと来たか。お二人さん。遅かったな」
「ご、ごめん。ちょっとなかなか眠れなくって......」
「てっきり昨晩はお楽しみかと思ってたー」
「聖さん!!そんなわけないじゃないですか!!」
美幸が力いっぱい否定すると、黒川は「何もそこまで否定しなくても......」と若干しょげた。そんな黒川の様子を見ていた白田が黒川にコッソリと耳打ちをしてきた。
「貴方まさか美幸君に本性見せたり......してませんよね?」
「何を言ってるのか分かりませんね。......オレは隠すつもりなんか微塵もなかっただけだ」
「ハァ......美幸君も面倒なものに捕まってしまったものですね」
白田はそう言うと、黒川の肩をポンと叩き「くれぐれも美幸君に逃げられないようにしてくださいね?彼はこれからの稼ぎ頭になるんですから」と言葉をかけ、LUMINOUSのメンバー達を連れて朝食会場から去って行った。
「美幸。早く食べて観光に行くぞ?」
「......一樹さんもうキャラ隠さないんですね」
「お前に隠す必要はなくなったからな。......それに、こっちの方が好きっぽいしな?」
黒川がチラリと美幸を見やると顔を真っ赤にした美幸がいた。
「オレに攻められるの、嫌いじゃないだろう?」
「ち、違う!ただ......ギャップ萌えは、ある」
仕事では頼りになる仕事人間なのに、二人きりになると少し強引になる。そんなギャップに美幸の心臓はついていかないのであった。ただ、黒川は思い出した。昔喜子が「あの子は自覚のないMっ子なのよねぇ」と笑いながら言っていたのを。なるほど。それに間違いはなかったらしい。




