episode60
宴会はどんちゃん騒ぎになっていて、料理を終えた美幸が酒を飲む暇も場所もなかった。仕方なく縁側に座り込み、外の空気を吸っていると、首筋に冷たいものが当てられた。
「ヒァッ!!」
「わっ!すみません、驚かせてしまいましたか?」
「......黒川さん」
黒川は美幸にカシオレソーダの缶を手渡した。そして、美幸の隣に座り込んだのだった。
「それにしても、お酒が入ると皆キャラが崩壊しますね」
「初めて見た時は驚きました。でもそれからは、お酒を控えていたので、今日くらいは解禁です」
「なるほど。流石寮母さんですね」
それからは静かな空気が流れた。しかし、その無音すら心地が良い。その時だった。黒川は思い切って自分の気持ちを伝えることにした。
「美幸さん、私は貴方のマネージャーになれてよかったです」
「なんですかぁ?急に(笑)」
「そして、人間として貴方に惹かれました」
「......え?」
美幸は思わず缶を落としそうになる。黒川は場の空気に酔ったか?と心配したが、黒川の目は真剣であった。
「桃瀬 美幸さん。よければ私と付き合ってはくれませんか?」
「......オレ、男ですよ?それに黒川さんに迷惑ばかりかけて......」
「迷惑なんて。思ったことないです。美幸さんもMIYUKIも私に身近で愛させてくれませんか?」
正直、黒川の事は敏腕マネージャーとしかみていなかった。しかし、好意を持っていたのも事実だ。
「オレ、LUMINOUSの箱推しですよ?それも重度の」
「存じています。そんな貴方も愛したい」
「......黒川さんに迷惑ばかりかけてるし」
「迷惑に思った事はありません」
これはもう逃げ場がない。真剣な思いには真剣に返さなければ。
「黒川さん。オレは一生をLUMINOUSにそそぐくらいの人間です。最優先事項はもちろんLUMINOUS。それでもいいんですか?」
「もちろんです。これからの人生、私にくれませんか?」
「......はい。よろしくお願いします。黒川さん、いや"一樹"さん」
2人はそっと手を重ねると、静かに口づけを交わした。口からはかすかなアルコールの味がした。
「私達の関係は今のところ機密事項ですからね。特に、LUMINOUSにはバレないように」
「もちろんです。公私ともによろしくお願いしますね?」
「かしこまりました。私の愛しい人。」
そうしていると、部屋の中から喜子と白田が出てきた。2人とも酔ってはいるがきちんと自我は保たれているようだ。
「黒川君、ホントの事をまだ言ってないんじゃない?」
「......ホントの事、とは?」
「学生だった美幸に一目惚れしたってこ......」
「社長!酔ってらっしゃいますね!白田さん!ちゃんと見ててあげないと!」
慌てる黒川に美幸はポカーンとした。そんな前からオレの事を?!そう考えると恥ずかしくなり呆然とする美幸であったのだった。




