episode45
「でもどうして花ちゃんがわざわざ出向いて?」
「丁度こっち方面に用事があったから、よっちゃんの顔を見に来がてらね。また依頼の件については後日改めて連絡するわ。」
そう言うと、喜子が入れたコーヒーに口をつける。「うん。いつも通り美味しいわ。」と言うと、森は美幸に目をやる。
「...一体全体、どうしたら服がそんな有様になるのよ...。」
「アハハ...。これには海より深いわけが...。」
「ヨシ君、僕のTシャツでよければそれに着替えて!」
「あ、ありがとう...。」
澪里からTシャツを受け取ると美幸はそれに着替える。...こ、これは、澪里が昔コラボしたブランドのTシャツ!
「澪里さん!このTシャツオレ持ってるよ!色違いだけど!」
「わ!ホント?嬉しいなぁ。これ、かなり気合入って作ったんだよね!今じゃもう手に入らないプレミア物だよぉ。お古でよければそれ、あげようか?」
「え?!いいの?!うっわぁ、嬉しい!大切にする!」
全員の目に、この2人の周りに花が舞っているのが見えた気がした。なんともまぁ、和む光景である。Tシャツは澪里のサイズのため美幸には少しぶかぶかであったが、それでもオシャレに見えるのは流石モデルというところなのであろう。
「なんか、彼シャツっぽくていいな...。」
「ショウ君変態ぽーい!」
「ハァ?!んだと、澪里テメェ!!」
「ハーイ、ハイハイ。喧嘩しないの!まったく。美幸の事になると皆たかが外れたかのようになるんだから。少しは大人になりなさい?」
喜子や森がいる前で恥ずかしい...。だが、この光景を見てこの2人はぐふふと悪い顔をしていた。まさかとは思うが、森も...、と嫌な予感が頭をよぎる。が、これ以上の事は考えないようにした。
「いやぁ、いいもの見せてもらっちゃたわね。ご馳走様。」
「いえいえ(笑)いつでも見に来ていいのよ?」
不穏なやり取りである。まるで闇取引でも見ているような...。美幸が身震いをすると、皆が心配の視線をよこしてきた。「寒くない?大丈夫?」「何か温かい物でも飲みますか?」などと声もかけて来たのであった。
「大丈夫!大丈夫だから、皆心配しすぎ!!」
「そりゃあ、あんな事件があった後なんだから心配するに決まってるだろう?」
「そーそー。それによっしーは未来のウチのスターだよ?体調管理はしっかり、ね?」
やっぱり皆あの一件から過保護に拍車がかかってきたように思える。まぁ、推し達から心配されて嫌な気はしない。むしろありがとうございます!!という感じだ。オレはなんて幸せ者なのだろうか。美幸はいつ天に召されてもいい思いでいっぱいだった。




