episode33
美幸は黒川と共に喜子に連れられ事務所へとやってきた。
「これからMIYUKIのマネージャーは黒川君に任せるわ。いいわね?」
「勿論です。声をかけたのは私ですからね。責任を持ってマネージメントさせていただきます。」
「...よろしくお願いします。黒川さん。」
マネージャーが気心知れた黒川で良かった。そう思っていると喜子は「早速だけど」と声をかけてきた。
「例の広告の噂を聞きつけた雑誌出版社からたくさんオファーが来ているの。安心して。むやみやたらに承諾の返事はしてないわ。いち早くMIYUKIの名を売り込むために大手さんの数社に絞り込んだから。」
「何社程でしょうか?」
「一応5社程度ね。最初の撮影は2週間後。いいわね?」
美幸は息をゴクリと飲み込んだ。これが芸能事務所というものか。未知なる世界だ。手が震える。その様子に気が着いた黒川が美幸の手を取った。
「安心してください。貴方は人を惹き付けられる程の魅力の持ち主です。だから、この撮影、思う存分見せつけてやりましょう!」
「黒川さん...。はい。オレに出来ることなら全力で取り組ませていただきます!」
黒川の言葉によって、美幸の心を占めていた不安が期待へと変わっていく。
「美幸。よければこれからファッションモデルの撮影現場に見学に行く?勉強になるわよ。...ただ、今日のモデルは一癖あるヤツだけどね...」
「一癖?」
「一言で言えばわがまま王子。って所かしら。翔汰よりもオレ様よ。」
...再び不安がおとずれた。だが、2週間後のためだ。
「オレ、いくよ。見学。いいですよね?黒川さん。」
「勿論です。勉強しておいて損はありませんからね。」
「分かったわ。向こうのマネージャーには私から連絡しておく。撮影開始は...丁度今から一時間後よ。」
「撮影スタジオはAスタジオだから。」そう聞くと、美幸は黒川を伴い事務所を後にした。
「...やっぱり、なんだかドキドキします。」
「大丈夫ですよ。最初は皆緊張するものです。けれど私は美幸さんなら、MIYUKIなら何も心配していません。」
「撮影現場は貴方のためのステージです。」そう言って黒川は美幸に笑って見せた。まぁ、今日は見学だけだ。何も心配する事は無いだろう。...と、思っていたのはスタジオに着く前までであった。




