episode29
「美幸、翔汰。今日はお疲れ様。今日の仕事がいい方へ転ぶのを楽しみにしているわ」
そう言って去ろうとした喜子と黒川に美幸は「折角だからコーヒーでも飲んで行ってよ」と言って2人をシェアハウスへ誘った。ところが玄関の扉を開けた瞬間、キッチンの方から"ガシャーン"と言う音が響いてきた。なんだなんだとキッチンへ向かうと、晴達がキッチンで何かを作っていたようだった。材料を見る限り......これはケーキか?と答えを導き出した。
「......一体何をしているんですか?」
「!美幸君!もう帰ってきちゃったんですか?!」
「......おいおい、なんだよこの大惨事は?」
「あ、あはは!サプラーイズ!......的な?」
澪里の乾いた笑いに他の3人もつられて笑いだした。翔汰は美幸にコソリと「オレ達は料理はてんでダメだぜ」と耳打ちすると、美幸はワナワナと震え出し、
「第2回!大掃除大会を開催します!!」
と宣言した。それに晴達四人は「はいぃ!」と言うと片付けを始めた。喜子はその光景を見て、「トップアイドルとは思えないわね...」と言うと、美幸に家事を頼んでおいて良かった、と思うのだった。美幸はテキパキと指示を出すと三十分程で元の綺麗なキッチンへと戻った。
「ところで、どうして苦手な料理を?それにサプライズって?」
美幸は四人へと疑問をぶつけた。するとおずおずと口を開き始めた。
「美幸君がモデルとしての初仕事だったので......丁度オフでしたしサプライズでケーキでも作れば喜んで貰えるのではないか......と。」
「...材料を無駄にしちゃってゴメンね。キッチンも......戦場のようにしちゃったし......」
シュンとした様子で反省する4人に美幸は「ハァ」とため息をついて、微笑みを向けた。
「そんな事言われたら怒れないじゃないですか......。まさかこんなに嬉しい事をしてくれるなんて」
「ありがとうございます」と言うと四人は顔を見合せあい「あはは!」と笑い出したのだった。
「慣れない事はするものじゃなかったな」
「ケーキ屋さんに行けば良かったー」
理と聖の言葉に今まで黙っていた喜子が口を開いた。
「手作りであろうと、既製品であろうと、美幸は喜ぶわよ。ね?」
「もちろん!オレの為にありがとうございます。凄く嬉しかったです」
「それじゃあ、気を取り直してケーキ買ってこいよ」
「......何故翔汰がそんなに偉そうに......」
「まぁまぁ。あ、これだけ言ってもいいですか?」
「「?」」
美幸はコホンと咳払いをすると、とても良い笑顔で、
「皆さん、料理は禁止です。逆に仕事が増えるので」
そう言うと全員ションボリとしながら「はい......」と応えるしかなかった。




