episode28
「MIYUKI、いえ、もういいわね。美幸、今日はどうだった?」
喜子が帰り道の車内で問いかけてくると、美幸は先程までのオーラは何処へやら。どっと疲れが押し寄せてきていて座席の上で溶けていた。
「もう疲れたよ...。あんなに人が多いんだね。...やっぱりオレには向いて「なくはないわ!」」
喜子は思わず美幸の言葉を遮った。
「森ちゃんがね、是非ともモデルを続けてほしいって言ってたのよ。私もビックリしたわ。...貴方は世界に染まる才能があるわ。今日の撮影で確信した。だからどうか仕事を続けてはくれないかしら?」
「オレも良いと思ったぜ?最初はオレに着いてくる形だったが、1人でも十分過ぎる程の色気が醸し出されてたぜ?だから自信持てよ。な?」
「...翔汰さん...。ありがとうございます。」
美幸がお礼を言いながらふわりと笑うと、翔汰は頬を紅潮させ、「お、おう...」と吃りながら返事をした。そんな翔汰の様子に喜子と黒川は「落ちたな」と心の中で呟いた。
「相変わらず、翔汰ったら分かりやすいわねぇ。」
「ですね。」
「な、何がだよ!」
「そんなんじゃ、まだまだウチの美幸を任せる事は出来ないわよ?」
「ハァ?意味わかんねぇ!」
「まったく...まだまだお子ちゃまなんだから。」と喜子が言うと、翔汰はぶーたれながら美幸の肩に頭を乗せた。条件反射で美幸はその頭を撫でる。すると翔汰は気持ち良さそうに目を細め、次第に眠りへと落ちていった。その様子をバックミラー越しに見た喜子と黒川は、「あの翔汰が?!」とビックリしていた。
「え?なになに?どうしたの?」
「いえ...。翔汰って人懐っこいように見えて警戒心バチバチだから...。ここまで許す事なんて無いのよ?」
喜子はそう言うが、美幸はイマイチピンと来なかった。思い返してみると、シェアハウスに入居した時から翔汰は美幸に懐いていたからだ。
「翔汰さん、シェアハウスだと大体こんな感じだよ?昨日の夜もソファーに座ってるオレの膝を枕にして寝てたし。」
「他のメンバーさんも同じ感じだよ?」と言うと、喜子と黒川の頭の中には同じ言葉が浮かんでいた。
"生粋の人たらし"と。




