episode27
撮影が始まってからは怒涛の勢いで、緊張などしている暇が無かった。翔汰とのツーショットは、まるでワルツへと誘うかのような翔汰のフォローにより、自分には程遠いと思われていた"色気"が引き出されているかのようだった。一番歓声が高く上がったのは、ソファーでの写真だった。美幸がソファーへと横たわり、翔汰がそれに覆い被さる。美幸はそれだけだとなんだか物足りないように感じて、翔汰のシャツの首元を引き顔を近づけさせた。翔汰は最初、驚いたような顔を見せた。が、それも一瞬で、ニヤリと笑ったかと思ったら熱烈な視線を絡ませ合い、雰囲気だけでその場に熱が、色気が充満した。
「MIYUKI、良い顔してるぜ?その顔、カメラに見せてやれ。」
「...ハイ。」
翔汰に言われるがまま流し目をカメラに向けると、現場の空気が一段と熱を帯びた。
「...よっちゃん、本当にあの子、これが初めて?」
「え、えぇ...。私も驚いているわ。」
美幸と翔汰のまるで濡場のようなシーンに周囲は息を飲んだ。そして、ツーショットが撮り終わると、個別の撮影に入る。翔汰は持ち前の情熱さを思う存分醸し出し、一発OKとなった。そして美幸の番となった。美幸は一度目を閉じ深呼吸をすると、先程までの熱烈な色気とは打って変わって華やかな笑顔をカメラに向けた。カメラマンはシャッターをきる事をやめる事は無い。カメラマンの要望を聞くがままに表情を変え、ポーズを変え...。スタジオにいる誰もが美幸に釘付けとなって息をするのも忘れる程だった。
「ヒュー♪良いねいいねぇ。」
「翔汰、貴方...」
「オレは何もしてないぜ?もともと素質があったんだろう。...まぁ、オレもここまで化けるとは思ってもみなかったがな。」
「よっちゃん。彼は逸材よ。なんで今まで気が付かなかったの?審美眼がある貴方が今の今まで気が付かなかったなんて...」
「...子供の頃から愛嬌があって可愛らしくって。誘拐されかけたり、ストーカーにあったり...。それで地味な見た目に擬態してたのよね...」
「それに慣れたせいで私も抜けていたのよ。」と喜子が言うと、森は「なるほどねぇ。」と返事をした。そして喜子に向けてこう言った。
「よっちゃん。あの子、私のブランドに頂戴?」
その言葉に反応したのは翔汰だった。
「MIYUKIはpersicumの所属タレントだ。一つのブランドに収まる器じゃねぇよ。」
「大丈夫よ。本音を言えば独占したい所だけれど、この広告が出たら他所様も放っておかないでしょう。」
「これだけの魅力があるんだからねぇ。」としみじみと言うのであった。
「ハイ!これで撮影は終了になります!お疲れ様でした!」
その言葉と共に美幸はスイッチが切れたかのように、「大丈夫でしたか?!」と慌て始めるのであった。そして森は喜子に「さっきの件、考えておいて頂戴?」と言って喜子達の元から去って行った。




