episode25
もうレッスンどころではなくなってしまった。喜子と美幸は事務所のテーブルで向かいあって座っていた。そしてテーブルの上に置かれた紙。そこに書かれていたのは"契約書"の文字。
「さぁ、美幸。あとは貴方がサインをするだけ。逃げる事は許さないわよ。」
「...姉さん。なんの取り柄もないオレがタレントになるなんて無理だよ。」
「大丈夫よ。最初からテレビに出ろとは言わない。まずはモデルから始めていってくれれば...」
「そのモデルも!オレには荷が重いんだって!」
「LUMINOUSの家事手伝いだから、その仕事を受けただけ!」と言うと、喜子は「実はね...」と話し始めた。
「花ちゃんから連絡があったのよ。」
たしかにレッスン見学中に喜子は一度席を外していた。
「花ちゃんが貴方を見た瞬間、新作コスメのデザインを思いついたらしくてね。貴方に"virtus"のモデルになってくれないかと打診があったのよ。...まぁ、まだ撮影はしてないから貴方の実力は分からないけれど...。花ちゃんは凛とした姿に見惚れたらしいの。」
「どうかしら?チャレンジだけでもしてみない??」
美幸はどうも喜子のお願いには弱いらしい。
「本名でやるのは嫌だよ。」
「!!じゃあ...!」
「あ・く・ま・で!仮契約ならしてあげる。」
「良いわよ!きっとモデルの仕事、貴方なら楽しめると思うの!」
「仮契約用の書類に作り直すわね!」と喜子はデスクに向かった。
「美幸!良く決断したな!」
「僕らとも仕事出来そうですね。」
「美幸。身体作りならオレを頼ってくれて構わない。」
「サト君どーせプロテインの布教でしょう?」
「あのー、話しの腰を折ってゴメンなんだけどー。」
聖がそう発言すると皆が「なんだなんだ?」と聖に注目した。
「本名が嫌なら芸名?はどーするのー?」
「あっ」と全員が固まった。誰もそこまでは考えていなかったらしい。
「決まってないならさー、オレ、良いの思いついたんだけどー。」
「え?!なになに?!」
「白田さーん、紙とペン貸してー。」と言うと、聖は白田が持ってきた紙にペンをスラスラと走らせた。
「"美幸"って、"みゆき"とも読むじゃん?だからさー」
聖はペンを置くと紙を掲げ、
「"MIYUKI"とかどーかなー?」
と提案してきた。




