episode18
「はい。ではそう言う事で。失礼致します。」
「姉さん、なんて言ってましたか?」
「大変お喜びでしたよ。」
コーヒーを飲んで一息ついた後、黒川は早速社長である喜子に美幸のモデルの承諾の返事を電話した。「それはもう、狂喜乱舞かのように喜ばれていましたよ。」と言うと、美幸は「あはは...目に浮かぶ...」と若干呆れてしまった。
「さて、と。荷解きをしましょうか。」
「そうですね。まぁ、荷物を仕舞うくらいですけどね。あ、でもPCの組み立てもあるか...。」
「コンセントを挿せば良いだけなのでは?」
「ちょっとカスタマイズしているので...。最近パーツも買ったので、引っ越しついでに付けようかと。」
黒川は「PCは家電屋で売ってる状態が完成形なんじゃないのですか?!」と驚いた。
「まぁ、オレはゲームをよくしているので、それに見合ったスペックが必要なんですよ。」
「なるほど...。美幸君は頭が良いんですね。」
黒川がそう発した瞬間、美幸はどんよりとした雰囲気を纏った。
「...頭が良ければ大学受験失敗してないです...」
「!」
黒川は「墓穴を掘ってしまったか...」と発言を後悔したが、美幸が顔を"パンッ"と叩くと、「すみません。過ぎた事をグチグチ言うのは良くないですね!」と言うと黒川に笑みを向けた。
「...見た目だけじゃなくて、考え方も前向きになったんですね。」
「え?」
「社長は以前から"私達が過度に期待してしまって、プレッシャーをかけてしまったのがいけなかったのよね"と仰っていました。それで部屋に籠ることが多くなったとも。」
「あはは...。今となっては黒歴史ですけどね。」
美幸が笑ってそう言ってのけると、PCを組み立て始めた。
「姉さんは"自分達のせいで"って言うけど、オレにも落ち度はありましたし。...それにこうしてこの仕事が出来るようになったのも、ある意味受験が失敗したお陰?ですし。」
「だから後悔していません。」そして、「推し達の私生活を守る大事な仕事です!キッチリこなしますよ!」と美幸は"キリッ"とした顔つきになった。黒川は思わず「ふふっ」と笑みを零すと、衣服をクローゼットに仕舞っていった。黒川の零した笑みに美幸は頭に"?"を浮かべると、黒川は「すみません...」と言った。
「やはり社長の言う通り、あの子達の世話を貴方に任せて正解だったなって。」
「そ、そうですか...?」
「最初は一ファンにこんな仕事を任せて何かあったら大変な事になりますよ、と反対していたんです。けれど貴方のお陰であの子達の生活が1日であんなに変わったんです。」
「前なんて白田さんが行くまで起きてこない事がザラにあったんですよ?」と聞くと、今ではトップアイドルのLUMINOUSがだらしない生活を送っていたのには、普通なら引くところなのであろう。しかし美幸は「お寝坊さんとか可愛い...」と的外れの感想を抱いたのであった。




