episode16
荷物を全て軽トラに積み込み、いざ、シェアハウスへ行こうと車内に乗り込もうとした時、玄関から「美幸!」と呼ぶ声に呼び止められた。声の主は母であった。
「まさか、いきなり住み込みの仕事をするなんて思ってもみなかったわ。」
「それはオレもだよ。」
「喜子も強引な所があるからね。でもそれは貴方を想っての事なんでしょうし。1日過ごしてみてどう?皆さんにご迷惑おかけしてない?」
「大丈夫ですよ、お母様。美幸さんのお陰でシェアハウスはだいぶ...いえ、かなりキレイになっていたので、私は直接拝見はしていませんが、とても良い仕事をしてくれていたと思います。」
「ですから安心して下さい。」と黒川が言うと、第三者からの目線での言葉に母は安心して、「これから美幸の事をよろしくお願いしますね。」と言って、美幸と黒川のふたりを見送った。
「優しいお母様ですね。」
「心配性なだけですよ。それで...あの、黒川さん。」
「はい。なんでしょうか?」
「荷造りしながら考えたのですが...翔汰さんとのモデルの件、受けてみようと思います。」
「!本当ですか?!」
「再度確認しますが...本当にオレで良いんですか?」
「もちろんです!社長もお喜びになります!」
「細かい事はまた連絡させて頂きますね。」と黒川は嬉しそうにハンドルを切った。
「それにしても思い切りましたね。返事はまだ先でも良かったのに...。」
「...あんまり待たせるのも悪いなって。...それに...」
「それに?」
「自分に出来ることならチャレンしてみるのもありかなって。」
「素晴らしいです。とても良い事だと思いますよ。その決断と考えに、社長もお喜びになりますね。」
「姉の力を借りてばかりですけどね。」
美幸がそう言うと黒川は首を横に振った。
「使えるものは使ってなんぼです。それに社長の意思があったのも確かですが、スカウトしたのは私です。」
「なので貴方の実力と言うか魅力が勝ったんですよ。」と黒川は笑みを浮かべて言った。その黒川の言葉に美幸は擽ったく感じて照れた顔を見られたくなく、赤くなった顔で俯いた。そうこうしている間に軽トラはシェアハウスへとたどり着き、荷物を美幸の部屋へと運ぶと、「コーヒーでも入れますよ。」と美幸は黒川に声をかけた。
「良い香りですね。」
「コーヒー好きの両親の影響で。こう見えてコーヒーにはうるさいんですよ?」
「社長と一緒ですね。社長もコーヒーは絶対自分でいれるんですよ。」
「むしろ社員全員に入れてくれます。」と黒川が言うと、美幸は「姉さんらしいです。美味しい物はシェアしたがる人なので。」と言った。そして、一時のコーヒーブレイクを喜子やLUMINOUSの話をしながら楽しんだ。




